加藤豪将の「心」を覗く 「地獄」からの生還とジータ―氏の金言に厚みを増す

移籍先マーリンズにはヤ軍出身が20人以上、ストレスなく充実した日々

 加藤家の「自己決定と自己責任」の方針はずっと一貫している。

 高校生活を終え、複数球団のスカウトからドラフト指名の意向を告げられた時、プロ入りと推薦入学が内定していた米大学野球の名門UCLAへの進学の二者択一を迫られた。両親からは、「自分の人生は自分で決めなさい」の言葉と共に、メジャーリーガーになる確率を高卒と大卒の両面から分析し、生涯賃金差までを割り出した独自の資料が手渡された。今回のマーリンズ移籍も、加藤本人がヤンキースを含めた他球団からのオファーを断り決めている。

 移籍したマーリンズには、コーチや球団関係者、現場のスタッフにヤンキース出身者が20人以上もいる。新たな環境でのストレスはまったくなく、キャンプ初日から心身共に充実した日々を送っている加藤が、こんな告白をした。

「バントや一、三塁の守備練習で出されるシフトのサインがヤンキースのマイナー時代と同じでビックリ(笑)。もちろん、本番では変わってます」

 加藤からはもう一つ、凛とした空気が伝わってくるエピソードが飛び出した。オープン戦初戦を翌日に控えた2月21日のことだった。全体練習前のクラブハウスに球団の最高経営責任者(CEO)に就くデレク・ジータ―氏が現れ、こんな言葉を選手に贈った。

「レギュラーを取るんだという強い気持ちで私は毎年春のキャンプに臨んでいた。その気持ちが変わることは1度もなかった」

 聞き入った選手達の目がこの時は違ったという。ヤンキースの名遊撃手として鳴らしていたスーパースターが輝かしい実績にきびすを返す――。心に染み入るメッセージにマーリンズ移籍への喜びが体中を巡ったと加藤は振り返る。

「悩むことも楽しみの一つと今は捉えることができる」

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