加藤豪将の「心」を覗く 「地獄」からの生還とジータ―氏の金言に厚みを増す

「悩むことも楽しみの一つと今は捉えることができる」

 プロ8年目で初めてユニホームの背中に「KATOH」の名前が付いた。マイナー選手のユニホームにはない自分の名前を背負う気持ちはどうなのか……。加藤は感慨をまったく示さない。なぜなら、「元々ヤンキースの選手が着るユニホームに名前はないですから」。加藤が新天地のユニホームに袖を通した瞬間に思ったのは「違うチームで新しいスタートだな」だった。

 ヤンキース傘下のマイナー時代に味わった屈辱の日々があったからこそ今、望んだ環境で大リーグ一歩手前の過酷な生存競争に加われていると説く加藤は、自身の第2章の始まりをこう括った。

「もちろん今も打撃で悩むことはありますが、その悩みを自分が見る角度が違うという感覚ですね。悩むことも楽しみの一つと今は捉えることができます。そして、毎日たくさんバットを振りたいという気持ちはあの頃と変わってないんです」

 プロ8年目の春に掴もうとしている悲願の大リーグ昇格は同じマイナー契約で招待選手の野手マット・ケンプ、ショーン・ロドリゲス、さらにはDバックスで抑えの実績があるボックスバーガーに加え、中南米出身の若手選手数人がここまでのオープン戦で猛アピールし、険しい道になっている。

 新型コロナウイルスの感染拡大の影響で実戦でのサバイバルレースは幕を閉じた。しかし、強靭な目的意識に貫かれた加藤豪将の歩みを知ると、大リーグ昇格への“選考”レースを最後まで混沌とさせる存在であることは間違いない。

(木崎英夫 / Hideo Kizaki)

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