“米国留学”と“自宅ブルペン”と…プロ入りを目指す18歳右腕の前代未聞の挑戦

佐藤のボールを受ける元プロ捕手の野口寿浩氏「このくらいなら2軍にいるぞ」

 英語はどちらかというと苦手だったが、IMGアカデミーに飛び込んだ。現地では、午前中に技術練習やウェートトレーニングを行い、午後は英会話の勉強をするという日々が続く。IMGのチームとして大学チームとの試合も組まれ、一定の登板間隔でマウンドに上がっている。

「ちゃんとコースを投げ分けられたら、初めからけっこう通用しました。初めて試合で投げたときは、2回無安打無失点1四球の2奪三振。(その時の)印象が良かったので、チームメートからはウェルカムな感じでした。英語も行く前は完璧に喋らないと生きていけないのかなと思ったんですけど、行ってみたら知ってる単語で案外通じました。度胸はつきましたね」

 米国の新たな環境で力を伸ばしている佐藤だが、一時帰国した際には強力な“援軍”もいる。ヤクルト、日本ハム、阪神、横浜の4球団で捕手としてプレーし、2018年までヤクルトで2年間、バッテリコーチを務めた野口寿浩氏に“家庭教師”として野球を教わるようになったのだ。基礎トレーニングに加えて、現役時代に野村克也氏から指導を受けた野口氏による座学もあり、都内の自宅の庭にある“ブルペン”で投球を受けてもらうこともある。

 元プロ捕手の目に佐藤の投球はどう見えているのか。昨年6月にブルペンでボールを受けたときの印象について、野口氏は「このくらいなら(プロ野球の)2軍にいるぞ、と。だから、これは磨けば光るなと思いました」と振り返る。「言ったら言っただけ良くなる。それを一気にバーンといかせようとは初めから思っていなかったですが、やっていて面白いですよ」。元々、伸びしろが大きく、野口氏の指導とIMGアカデミーでの経験で「まずは球の質が良くなってきた。(初めて指導したときから)142キロ出ていましたが、当時は終速120キロ台だったかもしれません。上の世界に行けば行くほど打たれる球でした。でも、質が良くなってきて、これくらいなら2軍に行けばいるな、というくらいになってきました」。

 142キロという数字自体についても「センサーが入ったボールを投げて、スマートフォンでスピードが出るもので測っているのですが、ちょっと怪しいかなと。142キロですが、捕った感覚ではもうちょっと出てるかな」と野口氏。しっかりとした機材で計測すれば、もっとスピードは出ている可能性があるというのだ。「体は大きいですが、まだ見かけ倒しの体なので、本物の体力になってこないと。ただ、本物になって変な癖がつく前に投げ方の基礎は入れたつもりではいます。それを忘れないようにしながら本物の体の体力がついてくれば面白い。私が思い描いている体になってくれば、140キロ台後半くらいは出てくると思います。他を磨けばもっといくでしょう。速球派、技巧派でざっくり分けるなら、速球派に入れるポテンシャルは持っています。パワーピッチングしていけるタイプですね」。伸びしろはまだまだある。

 一方、これまでは「独学で」投げていたという佐藤も、野口氏の指導を受けた効果を実感している。

「考え方は全部ガラッと変わりました。野口さんが現役時代にノートにまとめていたことを教えてもらって変わりましたし、トレーニング方法とかピッチングのフォームも考え方が変わりました。(座学も)面白かったです。(いつも)2時間ぶっ通しでやっていただいて、むちゃくちゃ面白かったです」

「ここまでやっていただけて、プロにならないと逆に申し訳ない」

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