体重の増減、辛辣な選手評…いつか来る球春を待ちながら楽しみたい「選手名鑑」

過去の所属先、守備位置の転向、寸評が毎年の楽しみに

「選手名鑑」で楽しいのは「前年との比較」だ。前年の選手名鑑があれば、それを見比べるといろいろなことがわかる。前年、活躍した選手の中には背番号が変わった選手がいる。また名鑑での写真の大きさが変わった選手もいる。当然、年俸もアップしている。身長、体重も注目だ。

 前年から突然、体重が増加している選手もいる。筋トレで筋肉量がアップしたのか? それとも太ったのか? 細かいところでは、投手から野手に転向した選手、内野から外野に転向した選手などもいる。扱いは小さいが、コーチにも注目だ。コーチの中にはチーム生え抜きで選手からそのままコーチになった人も多いが、所属球団とは関係なく、いろいろな球団を渡り歩くコーチもいる。

 経歴に多くの球団名が記されているコーチは、指導手腕が高く評価されていると考えられる。

「選手名鑑」の写真や基本的なデータはNPBから提供される。だから選手写真はどの名鑑も同じだ。各冊子は、データや選手評、選手のコメントなどで差別化を図っている。「選手名鑑」といえば「今年は勝負の年」「まだまだ老け込む年齢ではない」などのお決まりのフレーズが多かったが、今は他には見られない「選手評」を書くのが名鑑ライターの腕の見せ所になっている。

 投手なら、昨年からプレートを踏む位置を変えた、とか、打者なら、先輩打者のアドバイスで変化球打ちを覚えた、など、野球ファンには堪らない情報が掲載されている。NPBでは、選手のロースターは2月中旬には最終的に固まる。「選手名鑑」は前年1月後半には入稿するが、それでも選手情報は90%以上が正確だ。

 しかし、MLBでは、近年、多くのFA選手の去就がキャンプシーズンになっても移籍チームが決まらない。これはMLB「選手名鑑」の編集者泣かせだ。昨年は、ダラス・カイケル、クレイグ・キンブレルという一線級の投手が開幕後まで移籍チームが決まらなかった。「選手名鑑」には「所属先未定選手」などのコーナーに掲載されていた。これ以外にも、「選手名鑑」をじっくり読むと、野球界の様々な事情が見えてくる。ぜひ、楽しんでほしい。

(広尾晃 / Koh Hiroo)

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