4・3代表発表予定も一度仕切り直しへ ソフト協会幹部の人生をかけた5年間

一番大切なことはチーム全体の意識を一つにすること、宇津木監督はすでに切り替わっていた

 矢端氏は北海道で長年、高校のソフトボール部を指導してきた。U-19などのアンダー世代の監督を務めた時から知っている選手が、五輪の候補選手となっている。第三者の意見も聞き入れ、透明性と客観性を持って、メンバー選考を行ってきた。チームを強化しながら、トップレベルの選手たちを束ねた教員時代から日本ソフトボール協会のチームリーダーとなった今も変わらないものがある。

「一番大切なことは、目標に対して、強い意志を持って取り組むことです。メンバーに入れるかどうかなど、目先の課題はあるとは思いますが、日本のために、金メダルを目指してとにかくやれることをすべてやるという、強い意志を個々が、チームが持つことです。仮に、レギュラーだろうが、補欠だろうが、我々スタッフも、関わる人間、事務局も含めて私利私欲を捨てて1つの目標に向かってやっていくことが一番大事かなと思います」

 愛するソフトボールが五輪競技に復活しただけでも喜んだが、大役を任され、気が引き締まる思いだった。この“5年計画”に携わって土台を作り、3年前の2017年に宇津木麗華ヘッドコーチの就任後は、基本的にはヘッドコーチの戦略、戦術に忠実にこなし、サポートに尽力してきた。
 
 延期が決まり、電話で連絡を取り合った宇津木ヘッドコーチは「私以上に切り替わっていましたね」と感服する。指揮官は自分たちが歩き始めていかないといけない方向へすでに舵を切り始めていた。

 矢端氏が今、直面している課題は選手のメンタルのケアでもある。ひとつのゴールに向かって、チームを動かすことは容易ではない。

「育てる上で、選手の心情を理解するというのは難しいテーマです。その上、オリンピックですから特別なメンタルが必要ですし、選手たちもメンタルコントロールが本当に大変だと思います。人間にはそれぞれ、考えがあります。その人間たちをチームとして、ひとつにする。欲を捨て、一つの目標に向かって協力するんだという体制をこれからもう一度、作っていきたいと思います」

 気持ちの整理に時間はかかるかもしれない。ただ、切り替えて、思いをもう一度、確認し合うことがリスタートの第一歩なのかもしれない。止まった時計は少しずつ、動きだしている。

(楢崎豊 / Yutaka Narasaki)

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