「何言ってんの?」 米ワンポイントリリーフ禁止に元ロッテ左腕が反論のワケ
2005年ロッテ日本一を牽引した元左腕・藤田宗一氏「どれだけ多くの仕事を奪うのか」
近年のメジャーでは、ビデオ判定やチャレンジ制度の導入、コリジョンルールの制定など、毎年積極的にルール改正や新たな取り組みを続けている。開幕が延期されている今シーズンも同様だ。2020年シーズンからは「スリーバッターミニマム」という新ルールが施行される予定になっている。いわゆる「ワンポイントリリーフ禁止」だ。
現コミッショナー、ロブ・マンフレッド氏の指揮の下、メジャーでは試合時間の短縮に励んでいるが、これもその一環として生まれたルール。投手交代の回数が少なければ試合時間の短縮に繋がる、というわけだ。具体的には「怪我や病気の場合を除き、投手は最少でも打者3人と対戦、もしくはイニング終了まで投げること」が義務づけられる。この新ルール導入に際し、アメリカでは大きな議論が沸いたが、日本にも「何言ってんの?」と導入に意義を唱える人がいる。ロッテ、巨人、ソフトバンクで救援左腕として活躍した藤田宗一氏だ。
今季からメジャーでワンポイントリリーフが禁止されると聞いた時、何よりもまず「えっ?」と驚いたという。
「決まったと聞いて『えっ? 何言ってんの?』って思いましたよ。ワンポイントとして飯を食っている選手がいっぱいいるのに、その子たちはどうするんだろう? 先発に回すとなってもできるのか。当然できない子もいるわけで、どれだけ多くの仕事を奪うんだ、と正直思いました」
2005年にはセットアッパーとして薮田安彦、小林雅英と「YFK」を形成。チーム31年ぶりのリーグ優勝と日本一に大きく貢献した藤田氏だが、左腕ということもあり「ワンポイントリリーフ」として起用されることもあった。それだけに「ワンポイントリリーフ」の醍醐味や重要性は十分知り尽くしている。
「特に左のワンポイントでいく時は、強打者が相手のことが多い。2アウト満塁、左の強打者が来て、そこにワンポイントリリーフを注ぎ込んで。この勝負を決する場面で、ファンもまた『抑えてくれ』『打ってくれ』とそれぞれに思うのが面白い。その楽しみを奪ったら『えっ?』ってなりますよね。投げている立場からしたら、寂しいです。試合が決まる場面、一番熱いところですよ。そこを取ってどうするんだ?って自分は思いました」
ワンポイントリリーフの禁止は、ただ単に“スペシャリスト”たちの仕事を奪うだけではなく、チーム構成や起用法にまで大きな影響を与えることになりそうだ。藤田氏は「中継ぎ陣に別の負担がかかる」と予想する。
「ワンポイントだったら、上手くいけば10球かからないわけですよ。だから連投もできた。それが打者3人に投げるとなったら20球、30球はかかる。今は30球投げたら1日は間を空けようという流れなので、翌日は投げられない。そうなると、中継ぎを1枚増やさなくちゃいけなくなる。もしかしたら、先発がもう1イニング長く投げなければいけなくなるかもしれないし、抑えが2イニング、3イニングと投げることになるかもしれない。そうなると、ロングリリーフがいた方がいいのか。こうなると中継ぎ陣の左右(腕)のバランスも変わってくるし、中継ぎの役目そのものが変わる可能性もあると思います」