【消えた選抜からの道3】全寮生が帰省した日本航空石川 “遠隔指導”で逆境を逆手に

強豪校では異例の長期休暇「引退後の半年で伸びる選手もいる」

 石川県高野連は春季大会開催の決定を今月11日としており、このまま春季大会が中止されれば選手の集合はゴールデンウィーク明けの5月中旬頃の予定だという。石川県は比較的感染者の少ない地域。私立高校の中には変わらず全体練習を続けている学校もあるが、春季大会中止なら約2か月間の長期休暇となる。このハンディキャップをどう捉えているのか。

 中村監督は「確かに、今となっては寮に残っていたほうが安全だったという考えもできます。能登からは1人も感染者が出ていないし、学校や寮は町からは隔離されている。練習も問題なくできたでしょう」と認めつつも、意外にもこの状況をポジティブに受け止める。

「こんなことを言ったら怒られるかもしれませんが、不安よりもむしろちょっと楽しみなんです。1か月の休みって高校野球ではありえないでしょ。ただ、不思議と引退してから大学に進むまでの約半年で、驚くほど伸びる選手がいる。それは、それまでの管理された練習から、自分で考えたことを実践できるだけのまとまった時間があるから。思い切ってフォームを変えてみたり、新しいことに挑戦してみたり。今回の帰省期間がそうなることだってありうる。劇的に伸びて戻ってくる奴がいると思うんです。今必死に練習してる学校と、2か月間何もできなかった学校、後者のほうが劇的に伸びたら面白いでしょ。選手にもそう話しています」

 迅速かつ柔軟な指導姿勢と、逆境を逆手に取る思考法。選手たちは日本各地に散りつつも、再会の日まで個々の力を磨いている。

(佐藤佑輔 / Yusuke Sato)

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