盗塁阻止時における捕手の送球コントロールを分析 鷹甲斐、中日加藤、巨人小林は?

“甲斐キャノン”以上!? 球界最速“加藤バズーカ”VSポップタイムは平均的もコントロール抜群の小林

 次はセの代表的な2人の捕手を比較する。まずは中日の加藤匠馬だ。昨季は自己最多の92試合に出場。その強肩は“加藤バズーカ”と呼ばれ、セ・リーグ走者の盗塁を度々防いだ。昨季の平均ポップタイムは1.88秒。これは甲斐を上回り、12球団の主要捕手で最速の値だ。

 加藤と比較するのは、守備型捕手の代表格と言える巨人の小林誠司。2016年から4年連続で盗塁阻止率リーグトップだが、意外にも昨季の平均ポップタイムは1.94秒と平凡だ。実はこれは昨季に限ったことではなく、小林は以前からポップタイムで見るとそれほど優れているわけではない。彼ら2捕手のコントロールを比較したのが次のイラストだ。

加藤匠馬と小林誠司のコース別送球割合を比較【画像:DELTA】
加藤匠馬と小林誠司のコース別送球割合を比較【画像:DELTA】

 まず加藤は、さきほどの森と同様に高めに浮く傾向が強いようだ。特に一塁側の高めに送球が抜ける傾向が見られる。ただ、その分ワンバウンドやショートバウンドは4人の捕手の中で最も少なく抑えられていた。ポップタイムだけでなく、コントロールの面でも能力の高さが見える。

 一方の小林は高めに浮く送球が非常に少ない。19回の送球のうち、捕球者の頭の目安より高く投げられたのはわずか2球だけ。甲斐と同じく低めに抑えることに成功している。さらにすごいのはここからである。

 小林はほとんどをよりアウトになりやすい一塁側に集めている。19球のうち三塁側に投げられたのはわずか4球のみ。捕球者が捕りやすいというだけでなく、素早くタッチできるところにピンポイントにコントロールしていることが読み取れる。ポップタイムはそれほど速くない小林が、毎年高い盗塁阻止率を維持できるのは、こうした的確なコントロールが1つの要因と言えるだろう。

 一般的には盗塁阻止時の捕手の送球はスピードばかりが注目されがちである。ただこうした視点を持ち込むことで、より盗塁を奥深いゲームとして楽しむことができるはずだ。野球が再開した際には、捕手の肩の強さだけでなくコントロールにも注目してみてはいかがだろうか。

(DELTA)

DELTA http://deltagraphs.co.jp/
 2011年設立。セイバーメトリクスを用いた分析を得意とするアナリストによる組織。書籍『プロ野球を統計学と客観分析で考える デルタ・ベースボール・リポート1~3』(水曜社刊)、電子書籍『セイバーメトリクス・マガジン1・2』(DELTA刊)、メールマガジン『1.02 Weekly Report』などを通じ野球界への提言を行っている。集計・算出した守備指標UZRや総合評価指標WARなどのスタッツ、アナリストによる分析記事を公開する『1.02 Essence of Baseball』(https://1point02.jp/)も運営する。

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