盗塁阻止時における捕手の送球コントロールを分析 鷹甲斐、中日加藤、巨人小林は?

ソフトバンク・甲斐拓也(左)、巨人・小林誠司【写真:藤浦一都、荒川祐史】
ソフトバンク・甲斐拓也(左)、巨人・小林誠司【写真:藤浦一都、荒川祐史】

セパの“強肩”捕手の二塁送球コントロールを分析、高めの抜け球と三塁側へ外れる送球は盗塁阻止率が低下

 多くのタスクが求められる捕手の能力の中でも、肩の強さは特に重要な要素とされている。強肩捕手というと現在のNPBでは真っ先にソフトバンクの甲斐拓也の名前が挙がるだろう。盗塁阻止時に、捕手が捕球してから二塁ベースカバーの選手にボールが到着するまでの時間(ポップタイム)は昨季のNPB平均が1.96秒。そんな中、甲斐の場合は1.7秒を切ることもある。

 だが、いくら送球が速くとも、二塁ベースカバーの選手が捕球できないところに投げたのでは台無しだ。盗塁阻止にはボールのスピードだけでなく、捕球できるところ、その中でも野手が素早くタッチしやすいところに投げるコントロールが求められる。

 野球のデータ分析を行うDELTA(https://1point02.jp/)では、二塁盗塁阻止時に捕手の送球がどのコースに投げられたかを、2019年のNPBを対象に分析。今回はそのデータをもとに、NPBの代表的な捕手の送球コントロールについて見ていきたい。

 はじめに、全体の傾向を見ていきたい。盗塁阻止時の送球はどのあたりに投げるとアウトになりやすいのだろうか。下のイラストは二塁盗塁が発生し、送球が行われたケースの阻止率を、捕手側から見た視点でコース別に表したものだ。目安として、二塁ベースと、ベースカバー選手の捕球時におけるおおまかな頭の高さを中心に示している。横に引かれた黒線は下が地面、上が地面から約2メートルの高さ。青枠で囲んだ地面より下の値はワンバウンドないしショートバウンド送球となった時の阻止率だ。

二盗盗塁時の送球コース別盗塁阻止率(捕手視点)【画像:DELTA】
二盗盗塁時の送球コース別盗塁阻止率(捕手視点)【画像:DELTA】

 これを見ると、高めに浮く送球、またワンバウンドやショートバウンドの送球はアウトになりづらいことがわかる。特に約2メートル以上にあたる一番高いコースでは、どこも阻止率が20%以下と、ワンバウンドやショートバウンド送球以上に阻止率が落ち込んでいる。

 次に左右で見ると、二塁ベースを挟んで三塁側よりも一塁側で全体的に阻止率が高くなっている。ほぼベース上に来た下から2番目の高さで見ると三塁側が46.1%、一塁側が58.4%と10%以上の差が生まれている。一塁走者へのタッチは一塁側で行われる。一塁側への送球は、捕球地点からタッチまで要する時間が短くするため、阻止率が高くなっているのだろう。

 これらを見ると、コントロールの面で盗塁阻止率を高めるには(1)送球の高低のブレ、特に高めに送球が抜けることを制御し、(2)三塁側ではなくやや一塁側に投げることが重要であることがわかる。

ポップタイムに大きな差がない甲斐と森には制球面で違いが

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