【私が野球を好きになった日12】横浜高・松坂大輔に惚れた夏 放送席で触れた真実

松坂登板日が一日ずれる…しかし、ゲスト出演することになり放送席で隣に憧れの人が

 迎えた当日。熊本・リブワーク藤崎台球場。今までにない緊張と興奮が朝から襲っていた。松坂の高校時代のことはもちろん、ソフトバンク時代に同球場の復興のため寄付をしていたことなど頭にインプットして、初対面に臨んだ。

「松坂さんは試合中に放送席に来られて、中継の途中でお戻りになられたので、放送の前後できちんと挨拶もすることができませんでした。隣にいることが信じられなくて、贅沢な時間だったと思います。自分が野球少年に戻っていましたね」

 前日の登板の振り返りや2018年シーズンのこれまでのことを話しながら中継は進んだ。この日、代打で準備も想定していたという話でも盛り上がった。高校野球100年というテーマで、松坂に高校時代で最も印象に残ったシーンを聞いた。本人には、自身が憧れて野球を始めたという過去は伝えていないが、甲子園のどの場面が来ても、即座に実況で対応できる自信はあった。だが、松坂から予想をしていなかった場面が返ってきた。

「松坂さんが挙げたのは、高校2年生の夏の神奈川県大会の準決勝、横浜商戦でした。同点の9回にご自身の暴投でサヨナラ負けとなった試合です。夏の甲子園の決勝戦のノーヒットノーランとか、すごい記録を成し遂げた試合ではなく、先輩たちの夏を終わらせてしまった場面でした。あの負けがあったから、もっと練習をやらないといけないと思ったそうで、それが春夏連覇につながった、と。そういう場面を選ぶところに、驚きと同時に納得というか……。松坂さんの芯の部分を見ましたし、スターと呼ばれる所以なのかなと思いました」

 憧れの念を心の奥にしまい込み、ドキドキしながら中継を届けた。投げる試合を実況するという夢は叶わなかったが、その夢にもまだ先がある。プロ野球が無事に開幕すれば、西武戦で実況できるチャンスがあるかもしれない。ひとつの楽しみとして取っておく。

 あの夏のドラマを超えるような甲子園に魅了されたファンも多いだろう。松坂の投球が横浜高校の“隣町”に住んでいた一人の少年に「憧れ」という大きな影響を与え、今もなお次なる夢を与え続けていた。

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