日ハム宮西、12年連続50登板の原点は? 「絶対に財産になる」と送り出された消化試合
もし50試合に届かなかったら?「俺の気持ちが切れて終わる」
半ば強引にマウンドに送り出したのは、厚沢和幸投手コーチだった。「この1試合は将来、絶対に財産になるから、投げた方がいい」と渋るルーキー左腕の背中を押した。
この厚沢投手コーチの一言がなければ、1年目は49試合に終わっていたかもしれない。元中日の岩瀬仁紀に次ぐ12年連続50試合以上登板がこんな紙一重の1試合から始まったというのは興味深い。
今では岩瀬が持つ15連続50試合以上登板の記録が、大きなモチベーションになっている。酷使してきた左肘はすでに2度手術。14年には左すねを疲労骨折しながら投げ続けたこともあった。疲労が蓄積すると肘に溜まった水を病院で抜いてもらいながら、首脳陣の期待に献身的に応え続ける。
手術明けながら55試合に登板して44ホールドポイント、防御率1.71の好成績で最優秀中継ぎ投手のタイトルを2年連続で獲得した昨季終盤。12年連続50試合登板を達成した後に取材したノートには「50試合登板があるから心が折れずに投げ続けられる」という言葉がある。
その直後に聞いてみた。もし50試合に届かなかったら? と。宮西は「俺の気持ちが切れて終わる」と豪快に笑った。冗談か本気か。いつもの軽口であってほしい。
新型コロナ感染拡大で今季の開幕日はまだ決まっておらず、試合数は例年より少なくなる。13年連続50試合登板のハードルは上がるが、何百回も修羅場をくぐり抜けてきた宮西なら意地でもやってくれそうな予感がしている。
(石川加奈子 / Kanako Ishikawa)