先発は救援よりどれくらい難しい? データで見える「1.25」という数字の差

加重成績で求めた先発・救援の成績差【表:DELTA】
加重成績で求めた先発・救援の成績差【表:DELTA】

救援での防御率+1.25とすれば、妥当な先発での成績になるか

 前述の方法で合算したのがイラストの表だ。先発の防御率4.61に対し救援は3.36で差は1.25。さきほど紹介した先発と救援の平均防御率の差は0.30ほどであったため、より差が広がる形となった。FIPは4.36と3.58で0.78と防御率に比べると差が小さいが、それでも平均成績では0.20程度しか変わらなかったことを考えると、こちらも大きく広がっていると言っていいだろう。

 FIPの算出要素である奪三振・与四球・被本塁打の数を比較すると、先発・救援で投球内容がどう変わるかをより具体的に把握することができる。同じ打者5944人との対戦で、四死球は先発611と救援617でほぼ変わらなかった。しかし奪三振は先発の946に対し救援で1153と増加。被本塁打も先発の161に対し救援で111と減少に成功している。

 やはり1イニングに力を注いで投球できること、先発にとって壁となる同じ打者と何度も対戦することによる打者の慣れが発生しないことが救援での成績良化につながっているのだろう。またワンポイントリリーフなど、監督の采配により有利な相手(状況)に登板させやすいことも影響していると思われる。

 結果から安直に考えれば、救援の防御率を+1.25点、FIPを+0.78点とするとその投手の先発成績に換算できるということになる。無論、選手個々の適性やチーム事情などは考慮してはいないため、実際に配置転換を行ったからといってこの成績になるとは限らない。

 首脳陣に先発能力がないと最初から判断された投手はサンプルに含まれていない点、疲労蓄積を考慮しきれていない点など、いくつかの問題も残っている。それでも、先発と救援の平均成績をそのまま見比べるよりはずっと実態に迫った数字になっていると考えられ、選手を評価する一つの目安にはなるのではないだろうか。

(注1)2015~2019年の救援登板で1試合中に1イニングを超過したのは全体の約15%程度。

(注2)FIPは防御率に比べると全体的に先発・救援間での差が小さくなっている。これは先発が残した走者を救援が還した場合、防御率は先発の責任になるがFIPは無関係であること、救援のほうが奪三振数を伸ばしやすいために、走者を還さず残塁させる割合が高めになることなどに起因する。

(注3)サンプル数確保のために年数をむやみに広げてしまうと、予告先発のない時代や、現代の救援と異なる起用法の時代が含まれてしまうため、範囲は5年間に留めた。例えば2000~2009年は救援登板で1イニング超投げた割合は約28%で近年の倍近い。

(注4)この条件だといわゆるオープナーやショートスターターも先発に含まれてしまうが、全体の中では少数であり該当者を除いても結果はほぼ変わらない、アクシデントによる早期降板とオープナーとを客観的に区別するのが難しいなどの理由から今回は考慮しない。

(DELTA・二階堂智志)

DELTA http://deltagraphs.co.jp/
 2011年設立。セイバーメトリクスを用いた分析を得意とするアナリストによる組織。書籍『プロ野球を統計学と客観分析で考える デルタ・ベースボール・リポート1~3』(水曜社刊)、電子書籍『セイバーメトリクス・マガジン1・2』(DELTA刊)、メールマガジン『1.02 Weekly Report』などを通じ野球界への提言を行っている。集計・算出した守備指標UZRや総合評価指標WARなどのスタッツ、アナリストによる分析記事を公開する『1.02 Essence of Baseball』(https://1point02.jp/)も運営する。

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