なぜ“3ストライク4ボール”なのか? 今さら聞けない野球のルールを振り返る

試合時間短縮のため3ボールも検討されたが…かえって時間は伸びることに

 この「3ストライク9ボール」が、徐々に変わっていく。その変化とナショナル・リーグでの「walk」と「三振」の比率を見ていこう。記録サイト「Baseball Reference」による

1876年 「9ボール」0.57(336/589)
1880年 「8ボール」0.37(740/1993)
1882年 「7ボール」0.74(1592/2159)
1884年 「6ボール」1.14(4947/4335)
1886年 「7ボール」1.31(5554/4248)
1887年 「5ボール」1.02(6053/5924)
1889年 「4ボール」0.95(7316/7669)

 この間、1880年には投手、本塁間が45フィート(13.716m)から50フィート(15.24m)になる。1884年には上からボールを投げることが認められる。1886年に「6ボール」が一度「7ボール」に戻されたのは、上手投げになって「walk」が増えたからだ。

 1887年には、打者が投手にコースを要求できなくなる。そして1893年には投手、本塁間が現行の60フィート6インチ(18.44m)になる。2019年MLBの「walk」と「三振」の比率は、0.37(15895/42823)になっている。

 9ボールが4ボールになったのは、時間短縮という意図があった。また9ボール時代は、ボールの数え間違いのトラブルもたびたびあった。1884年に投手が上から速い球を投げることが認められた当初は「walk」が増えたが、やがて投球技術が向上し、「4ボール」でもそれほど歩かせることがなくなった。

 野球は日本には1872年ころにもたらされたと言われる。当時は「9ボール」だった。アメリの野球は、ここから次々とルールを変更した。今もそうだが、日本野球はアメリカがルールを改定すると少し遅れてこれを導入している。その当時も遅れてルールを改定した。しかし、「walk」に関するルール変更はあまりにも頻繁だったので、地域によっては混乱が生じた。

 MLBでは「4ボール」は、何度も見直しが検討された。「3ボール」にすればさらに試合短縮につながるのではないかと、春季キャンプやオープン戦で実験的な試合が行われたが、ほとんどの場合「walk」が増えて、試合時間はかえって伸びてしまった。

「3ストライク4ボール」は、野球界が永年試行錯誤を繰り返して磨き上げた「絶妙のバランス」だといえよう。

(広尾晃 / Koh Hiroo)

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