かつては高さ50センチの球場も… 知れば知るほど奥が深い「投手マウンド」の歴史

下半身をしならせ投げる日本人と上半身の力で投げる外国人、マウンドで変わる投球技術

 マウンドには高さだけでなく傾斜角度のルールも設けられているが、細かな仕様はいまだに球場によってまちまちだ。日本にやってくる外国人投手の多くが戸惑うのは「マウンドの柔らかさ」。日本の投手はマウンドに上がると、フォームを安定させるため自分の足の着地位置に当たる場所をスパイクで掘って型をつけることが多い。降板時には自分の足の跡をならして元通りにするが、クローザーが上がるころにはマウンド前方はでこぼこになっていることもしばしば。これに違和感を抱く外国人投手は多い。

 反対に、MLBに渡った日本人投手はマウンドの固さに戸惑うことが多い。日本人は柔らかなマウンドを活かして、軸足に体重を乗せ下半身をしならせて投げる投手が多いが、外国人投手は固いマウンドに足を突っ張って上半身の力で投げることが多いとされる。日米の投球技術の違いはマウンドによるところも大きいのだ。

 日米野球の際など、日本の球場では新たに土を入れマウンドを固くすることもよくある。2014年11月に甲子園球場で行われた日米野球では、マウンドの部分だけに明るい色の土が入れられ、黒っぽい甲子園の本来の土からくっきり浮かび上がって見えていた(写真参照)。最近ではセ・リーグ球団の本拠地球場を中心に、MLB仕様の固い土に変更する球場が続出している。甲子園、マツダスタジアム、ナゴヤドームに続き、2019年シーズン前には東京ドームもマウンドを硬質の土に入れ替えた。これによって外国人投手は多少有利になるかもしれないが、日本人投手の故障が増えないかとも懸念されている。

 ボール、球場サイズ、そしてマウンドと、野球は「同じ規格」でありながら球場によって大きく仕様が異なるものがいくつもある。野球選手は、そうした「環境の変化」に柔軟に対応して成績を残していかなければならないのだ。

(広尾晃 / Koh Hiroo)

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