かつては高さ50センチの球場も… 知れば知るほど奥が深い「投手マウンド」の歴史

カブス・ダルビッシュ有【写真:Getty Images】
カブス・ダルビッシュ有【写真:Getty Images】

日本は約20年遅れの1988年に高さを改定、それ以前は今より13センチも高かった

 野球の「親戚」と言える競技にはソフトボールやヨーロッパで行われているラウンダースなどがあるが、これらの競技と野球の大きな違いの一つが「ピッチャーズマウンド(略称:マウンド)」だ。マウンドとは、直径18フィート(約5.5メートル)の円形の中に、10インチ(25.4センチ)の高さで土が盛り上げられた小高い丘のようなもの。その中央に、ピッチャーズプレートという横24インチ(約61センチ)、縦6インチ(約15センチ)の白いゴム製の板が埋め込まれており、このピッチャーズプレートからホームベースまでの距離は60フィート6インチ(18.44メートル)と決められている。

 19世紀半ばまで、投手は打者に下手投げでボールを投げており、この時期は投手と捕手の距離は45フィート(13.716メートル)だった。1881年にはこれが50フィート(15.24メートル)となり、現行の60フィート6インチ(18.44メートル)となったのは1983年。これ以前はダイヤモンドの前の方からボールを投げていたが、1893年のルール改定で一塁と三塁を結ぶ対角線上にピッチャーズプレートを置き、投手はダイヤモンドのちょうど中央からボールを投げることになった。投手と捕手の距離が長くなったのは、1884年に投手の上手投げが認められ、速い球を投げる投手が増えたことで投打のバランスが変わったからとされている。

 マウンドは18世紀半ばには存在していた。平らな土地でキャッチボールをしてからマウンドでボールを投げると、平地で投げるよりも投げやすいことに気が付くだろう。ボールを投げるという動作は「放物運動」なので、落差がある方が速いボールを投げることができるのだ。当初は高さに規定がなかったため、50センチ近い小山のようなマウンドから投げる球場もあった。1904年には「マウンドの高さは15インチ(約38センチ)までとする」と決められたが、下限は決められていなかったため、投手は以後もMLBの各球場でさまざまな高さのマウンドからボールを投げる時代が続いた。これが15インチに統一されたのはようやく1950年になってから。1969年には現行の10インチ(25.4センチ)に統一された。

 MLBが度々行ってきたルール変更は1~2年遅れでNPBや日本のアマチュア球界でも導入されるのが常だったが、マウンドの高さだけは20年近くも変更されなかった。1988年にようやくMLBと同じマウンドの高さになったが、それまで日本の投手はアメリカよりも13センチも高いマウンドから投げていたことになる。

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