バットの形はどうやって決まった? 当初は角材などからスタートしたバットの歴史

金属バットの登場で高校野球は人気を集めるが近年は「金属バットの規制」が課題に

 野球殿堂博物館に飾られている大打者のバットのサイズは以下の通りだ。

藤村富美男 長さ92.5センチ 重さ980グラム 直径6.4センチ
川上哲治 長さ88.9 センチ 重さ 850グラム 直径5.9センチ
大下弘 長さ88.9センチ 重さ920グラム 直径6.3センチ
ベーブ・ルース 長さ89.0センチ 重さ1,010グラム 直径6.4センチ
イチロー(NPB時代)長さ85.0センチ 重さ910グラム 直径6.4センチ
王貞治 長さ87.5センチ 重さ930グラム 直径6.3センチ

 藤村のバットは、川上や大下などより3センチ以上長い。そしてベーブ・ルースのバットよりは軽いが、重さも相当なものだった。藤村はこのバットで大活躍をした。「物干し竿」は、単なるファンサービスではなく、藤村の武器になったのだ。

 アメリカではバット素材には硬くて反発係数が高いホワイトアッシュやハードメイプルが使われるが、日本では柔らかでしなりがある、モクセイ科のタモ(ヤチダモ、アオダモ)などが使われてきた。

 しかし、バットの原料となる木の栽培面積が減って、木製バットの価格が上がったために、アマチュア野球では、アルミ合金の金属バットの使用が認められた。金属バットは日本の電気工学者で芝浦工大学長も歴任した大本修が開発。耐久性があるため木製バットよりも低コストになるために導入が進み、高校野球でも1974年から使用が認められた。以後、高校野球は打高が進展し、ホームランが増えて人気を集めるようになる。

 反発係数が高い金属バットは、打球速度が速く、選手が負傷するなど危険性が高まった。アメリカでは2012年から、反発係数を木製バット並みに調整した「BBCOR」仕様のバットに切り替えられている。日本でも、昨年から「金属バットの規制」が課題となり、日本高野連は金属バットの改良に取り組み始めている。

 野球のバットは単なる道具の範疇を超えて、選手の個性や、野球のプレースタイルにも大きな影響を与えているのだ。

(広尾晃 / Koh Hiroo)

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