コロナ禍で迎えたプロ野球開幕 無観客試合で求めた「臨場感」とそれぞれの音

西武・山川には幼児の愛のあるメッセージが鳴り響いた「がんばれ。どしゅこ~い!」

 ソフトバンクとロッテが対戦したソフトバンクの本拠地PayPayドームではファンから募集した応援ボードがスタンドに掲出され、応援団が使う横断幕も外野スタンドの後方に張り出された。2戦目からはホークスの攻撃時に応援歌を流し、翌日には打席に立つ選手ごとに、それぞれの応援歌を流す仕様に改善された。

 右翼スタンドの一角には人型ロボットの「Pepper」が配置され、7回攻撃時の「いざゆけ若鷹軍団」が流れる際には一糸乱れぬダンスを披露した。SNSでもこの様子が広まると、大きな反響を呼んだ。オフィシャルダンス&パフォーマンスチームの「ハニーズ」も無人のスタンドで、テレビで応援するファンに向けてパフォーマンスを行っていた。

 そして無観客試合で最大の醍醐味だったのが選手たちの発する「音」だ。試合中は“元気印”の松田宣や川島が大きな声で投手やチームメートを鼓舞する声が響き渡り、改めてチームを盛り上げるベテラン2人の偉大さを実感。また、特大の140メートル弾を放った柳田が「ヴワッ」と呻く声や、これに驚くチームメートの反応がストレートに伝わってくるところもまた楽しいものだった。

 西武はメットライフドームの内野席の座席にファンから募集し送付してもらった応援ボードを置き、外野芝生席には同じく送付された応援フラッグを敷いた。登場曲、男性DJの選手紹介、ウグイス嬢によるビジター側選手紹介などは、例年の公式戦通り。日本ハム戦試合前の名物“杉谷イジリ”は、開幕3連戦のうち初戦のみ、行われた。7回の攻撃前には、チアグループ「ブルーレジェンズ」とマスコットのレオとライナが観客席コンコースでダンスを披露していた。

 親会社系列の一部プリンスホテルでは、応援宿泊プランを設定。オリジナルグッズ、選手プロデュース弁当付きで、オンライン会議システムを利用してファン同士でコミュニケーションを取りながら応援できる。また、事前に送信した応援メッセージ動画をメットライフドームのビジョンに投影できるサービスもあり、実際、イニング間に、幼児が「やまかわせんしゅ、がんばれ。どしゅこ~い!」と叫ぶ動画などが流れていた。選手にも届いただろう。

 ホームチームだけに流れる得点機の応援歌に関しては、球音を純粋に楽しみたい、ビジターチームの選手やファンへの配慮の欠如、などいう意見も出たが、この前例のない“特別な開幕”に必要だったのは、来場できなかったファンをどう楽しませるか。各球団が臨場感を突き詰めた形だった。場内演出の音、選手らから発せられる声、それぞれの音が臨場感として、野球ファンとスタジアムの距離を近づけた。ファンは野球のあるありがたさを感じ、一日でも早く、球場で観戦したいという気持ちを高ぶらせたのではないだろうか。待ちわびるその日は、少しずつ近づいている。

(Full-Count編集部)

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