専門家が分析する巨人の「1番打者」事情 7番“降格”の吉川尚の狙いと亀井の万能性

巨人・亀井善行【写真提供:読売巨人軍】
巨人・亀井善行【写真提供:読売巨人軍】

野口氏「亀井はどこを打たせてもやってくれる選手」

 巨人は25日の広島戦(東京ドーム)を戦い、延長10回、5-5で引き分けた。巨人・原辰徳監督は前日、4打数無安打だった吉川尚輝内野手を7番に下げた。そこで1番に起用した亀井善行外野手が3出塁。7回には適時打を放つなど、存在感を示した。この起用について、現役時代にヤクルト、日本ハム、阪神、横浜の4球団で捕手としてプレーし、2017年から2年間ヤクルトでバッテリーコーチを務めた野球解説者の野口寿浩氏が原監督の思惑を解説。その結果、際立った亀井の“万能ぶり”に改めて、感服した。

 昨季、チームをリーグ優勝に導く原動力となった亀井と坂本の1・2番コンビが今季初めて見られた。ここまでは開幕戦で本塁打を放つ活躍を見せた吉川尚が3試合、3年目の湯浅、北村が1試合ずつ1番に起用されてきた。この日は37歳のベテランが1番に座り、調子の上がらない吉川尚を7番に下げた。野口氏は「長い目で見て、まずは吉川尚に状態を上げてもらうことを考えての打順だと思います。原監督のやりたい野球は1番・吉川尚ですから、シーズンを見越しての起用になっていると思います」と解説する。

 吉川尚が入れば、足も使える。走者となれば、2番の強打者・坂本への警戒度も分散される。しかし、吉川尚は開幕から打率.188とバットは湿りがち。連敗は避けたい巨人は、開幕6戦目にして、昨季の亀井・坂本の“形”を取った。チームの置かれている状況に順応できる亀井を起用した。

「原監督からすれば、苦肉の策です。(亀井、坂本の1・2番で)好結果が出たと思うかもしれませんが、吉川(尚)に1番を打ってもらうのが一番いい。(連敗はしたくない)この状況で『じゃあ、誰を一番にするか?』を考えれば、亀井という選択肢になりますね」

 若い選手にはない“味わい”があった。5回には亀井の四球から、2番・坂本の1号2ランで一時は逆転。7回には好機でタイムリーを放った。3打数1安打1打点、2四球。3度も出塁した。左翼の守備でも、本職は内野も途中から中堅の守備に入った増田大と一緒に追った左中間の飛球も「I got it!」(俺が取る)と大きな声を場内に響かせて、“カバーリング”して捕球するなど、チームを引っ張った。

「どこを打たせてもやってくれる選手なので、首脳陣も安心なのではないでしょうか。2番で起用すれば、ベンチが求めている2番打者になり、5番起用や得点圏に走者がいるとなれば、ポイントゲッターとして、走者を返すバッティングをしてくれる。この日にように1番ならチャンスメークもする。チームの調子が上がらない時に、はまってくれる選手です」

 吉川尚の復調を待ちながら、チームを動かす。若手にチャンスも与え、ベテランにも仕事をさせる原監督の采配。セ・リーグは2カード(6試合)を終え、巨人は4勝1敗1分と首位に立つ。ベテランと若手を適材適所の起用で、今年も育てながら、勝つという命題とともにシーズンは進んでいく。

(楢崎豊 / Yutaka Narasaki)

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