「心から『ありがとう』と言えるチームで」木村の逆転満塁弾に見えた西武の強さの源
辻監督「カバーし合い、心から『ありがとう』と言えるチームでありたい」
■西武 7-4 ソフトバンク(26日・メットライフ)
西武は26日のソフトバンク戦で、14年目の木村文紀外野手が8回2死に逆転満塁弾を放ち劇的勝利。この試合に、昨季までリーグ2連覇の強さの理由が集約されていた。
「いやいや、この試合に負けていたらエライことになっていた。木村様々です」。辻発彦監督は試合後、ホッと胸をなでおろした。実際、エースのニールを先発に立てたこの試合に敗れていたら、宿敵ソフトバンクとの6連戦で1勝した後3連敗となり、公式戦開幕後の通算成績も“借金3”。週末の残り2試合も思いやられるところだった。
この試合は、主砲の山川が先制2号2ラン、3号ソロを連発し優位に立ったが、7回にその山川のエラーも絡んで逆転された。1点を追う8回、1死満塁で打席に入った栗山は、犠飛を打ち上げることもできず一ゴロで、三塁走者が本塁封殺された。そんな崖っぷちで、続く木村が起死回生の逆転弾を放ったのだ。
辻監督は「その瞬間、山川もそうだけど、マネジャーによると、一番喜んでいたのが栗山だった」と明かし、「みんなが必死にやっているけれど、打てなかった時は他の人がカバーする。そして、心から『ありがとう』と言えるチームでありたい」と目を細めた。
西武の強さの原動力は、こうした一体感にある。ここ数年、菊池雄星、浅村、秋山ら主力がポスティングシステムやFAで続々流出しても、それは変わらない。今季は27歳の源田がキャプテン、25歳の森が選手会長に就任し、チームを引っ張る自覚を持ち、28歳の主砲・山川が雰囲気を引き締め、さらに野手最年長コンビの中村と栗山が支える。絶妙にバランスが取れている。
辻監督の観察眼も、強さの理由の1つだろう。キャンプやオープン戦では5年目の川越、4年目の鈴木ら若手の成長が著しく、木村の右翼のポジションを脅かした。しかし指揮官は「木村は昨オフから打撃に力を入れて、非常に良くなっている。昨年までとは違う」と、昨季打率.220に終った31歳の成長を見逃さず、この日まで今季開幕後7試合にフル出場させている。
コロナ禍に翻弄され、120試合に短縮され、何かと不透明な要素が多い今季も、獅子軍団の結束が綻ぶことはなさそうだ。
(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)