5連敗中のチームを救えるか… オリックス山本由伸の凄さを示す指標と特徴

6種類の球種を操り、そのどれもが一級品の質を誇る

○豊富な変化球と質の高さ

 リリーフとして登板を重ねていた2018年には、速球、カットボール、フォークの3球種が投球の大半だった。だが、先発に再転向した2019年は3球種に加えてカーブとツーシームの割合が大きく増加。やや頻度は落ちるが、スライダーを加えた6つの球種を使い分ける。なおかつ各球種の質が極めて高いといえる。

 最速で150キロ台後半に達する速球、同じく150キロを上回ることも少なくないツーシームに加え、カットボールも150キロに到達する。それに加えて140キロ台後半で鋭く落ちる高速フォークや、高速の球種に混ぜることでより効果を発揮するブレーキの利いたカーブもある。いずれの球種も実戦的であり、打者にとっては的を絞るのが極めて困難といえる。

○優位な駆け引きに持ち込む配球と投球術

 球種はいずれも一級品と呼べるだけの質を備えている山本。それでは、実際にそれらの球をどのように用いて投球を組み立てているのだろうか。プロ初完封を飾った2019年6月28日の西武戦を例に紹介したい。1点リードの場面で迎えた3回。2本の安打と四球で無死満塁という大ピンチを迎えた状況で、源田、外崎と対戦した場面での配球を見ていこう。

 源田に対する初球は外角低めに要求した捕手の構えとは異なり内角に行ったが、147キロで落ちる球にバットは空を切る。続く2球目は外角低めに今度は127キロのカーブを投じて再び空振り。3球目の145キロのフォークはボールとなり、4球目は再びカーブでファウル。変化球が4球続いた後の5球目、打者としては予測が難しい状況で155キロの速球を投じ、空振り三振に斬った。

 続く外崎に対しては初球の150キロのカットボールが外角低めに外れてボールとなり、2球目も同じく外角低めに150キロのカットボールを投じてファウル。3球目は外角低めに構えた捕手の要求とは異なりやや高めに浮いたが、153キロの速球で右飛に打ち取る。そして、タッチアップを狙った三塁走者は小田裕也外野手の好返球で本塁憤死。絶体絶命のピンチを無失点で切り抜けた。

 複数の速い変化球、緩急をつける緩いカーブ、そして155キロに達したストレートという、複数の引き出しを使い分け、打者との駆け引きを終始優位に進めた。それを可能とするだけの球種の多さと球速の幅、そして同点という大ピンチを迎えても動じずに腕を振り抜く強心臓という、優れた資質が大いに見えた場面だった。

○コントロール

 長いイニングを投げ抜くためのペース配分が求められる先発投手の方が、短いイニングを全力で投げ抜いてきっちりと抑えることが仕事のリリーフ投手よりも、制球という面では難しい要素が多いと言える。だが、山本の場合は、それとはやや異なる結果が出ている。リリーフとして活躍した2018年の与四球率は2.72。それに対し、先発を務めた2019年の与四球率は2.27と先発の方が与四球率が向上している。これは右腕の進化を示しているとともに、リリーフ時に比べ、より多彩な球種を操りながら、各球種の制球力も維持している能力の高さを証明してもいるだろう。

苦手な球団や成績の落ちる季節がないのも特徴

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