プロ初勝利のオリ鈴木優は「私を嫌っている」 都立高時代の監督が明かした秘話

親の心、子知らず…1年前の7月、プロ初先発前にはお世話になった人たちに電話

「卒業する間際まで、彼にダメ出しばかりしていました。人間ができていないと世の中を渡っていけませんし、彼が苦労する。同級生も鈴木の欠点を知りつつも言えるよう環境ではなかったので、自分がその役割をしていました」

 嫌われ役に徹した。オリックスとの契約時にも球団スタッフに「めちゃくちゃ怒ってやってください」と忠告もした。「鈴木本人は根にもっているかもしれません」というほど厳しい目線からの“トリセツ”を渡した。本人に監督の本心が届いているかはわからない。でも、それでいい。頑張っている姿を見られれば、自分も、都立の高校生の野球部員も励みになる。

“親の心、子知らず”という言葉があるが、怒声を浴びせても、愛を持って指導した教え子が可愛くないはずがない。入団後から今日までの活躍は細かくチェックしていた。「今日バッテリーを組んでいたいた若月くんとはファームの試合でも組んでいたな」「プエルトリコの経験は大きかったはず……」6年間、ずっと気にし続けていた。

 昨年の7月10日の楽天戦。5年目でプロ初先発が決まると高校時代にお世話になった方、一人一人に電話を入れていた。「鈴木が先発することになりました」「相手は楽天の岸投手が先発なんですが……」などと、教え子の晴れ舞台を一人でも多くの人と共有したいと考えた。“親心”だった。

 都立高校から直接プロ入りした投手で勝利したのは初めて。鈴木が第一人者となった。相原監督は「都立の子供たちだってプロになれるんだというひとつの指針を示すことができたと思います」

 捕手だった“原石”を「都立の星」に磨きあげた。プロで勝てる投手への礎を作った。輝いた白星は多くの人の希望となって、世界を明るく照らした。

(楢崎豊 / Yutaka Narasaki)

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