プロ注目最速143キロ左腕、享栄・上田 甲子園中止も些細な出来事「それが僕の価値観」

享栄(愛知)のエース・上田洸太朗【写真:荒川祐史】
享栄(愛知)のエース・上田洸太朗【写真:荒川祐史】

勝気なドラフト候補と全国制覇監督とを結んだ不思議な縁

 進んだ先は私学4強の一角でありながら、夏の甲子園出場を24年間逃し続けている享栄。今はライバル校の中京大中京で全国制覇の経験もある大藤監督が率いているが、名将との出会いも不思議な縁によるものだ。

「最初は他の高校に行くつもりだったんですが、そこのセレクションの帰りに寄った焼肉屋がたまたま享栄OBの方がやっているお店で。壁に飾られた写真から話が弾んで気づけば……という感じ。その焼肉屋に行ってなければたぶん享栄に来ることもなかった。大藤先生は自分が1年のときに電撃赴任してこられて、自分も新聞で読むまでは知らなかった。(中京大中京で全国制覇した)2009年の甲子園ももちろんテレビで見てましたよ。自分は同じ北陸の日本文理を応援してましたけどね(笑い)」

 今では週に1度の当直日に決まって風呂場で背中を流すという恩師の元で実力を蓄え、春には左腕ながら143キロを記録。すでに12球団のスカウトが視察に訪れるなど、押しも押されぬドラフト候補に成長した。卒業後の確固たる目標がある上田にとっては、前代未聞の甲子園中止も些細な出来事に過ぎない。

「こんなことを同級生に言ったら怒られますけど、僕の目標は子どものころからプロ野球で、甲子園はそこに続く小さい階段のひとつ。甲子園に出るのがすべてではないというのが僕の価値観なんです。中止発表翌日のミーティングでは下を向くチームメートもいましたが、僕はその時点で、もうチームではなく個人で動くときがきたんだと思っていた。言い方は悪いですが、もう人に構ってる時間はない。ここからは自分の夢のために動きださなきゃと」

 聖地への未練など微塵も感じさせず、自らの言葉で信念を語った上田。“甲子園は通過点”。全国4000校のなか、そう言い切る球児がいたっていい。

【動画】絶品のスライダーは必見 最速143キロ、U15で世界一経験の享栄のエース・上田洸太朗のブルペン映像

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