主将は退部、女房役は敵チームに 唯一の3年生部員が語る連合チーム出場の意味
夏の大会中止決定で、静かにバットを置いたたった一人の同期
第102回全国高校野球選手権大会の中止が決まり、約1か月。代替大会、引退試合、上の舞台、将来の夢……。球児たちも気持ちを切り替え、新たな目標に向かってそれぞれのスタートを切っている。新型コロナウイルスは彼らから何を奪い、何を与えたのか。Full-Countでは連載企画「#このままじゃ終われない」で球児一人ひとりの今を伝えていく。
昨夏、近隣4校と連合を組み、千葉の連合チームとして初勝利を含む2勝を挙げた関宿(千葉)。部員5人に助っ人1人を加えた今年は、同じく部員3人の流山との2校連合で2年連続勝利を狙う。昨夏の2回戦で先発、3回戦でリリーフ登板したエース戸井田快(といだ・かい)投手は連合チームで唯一の3年生部員。この春、ともにやってきた2人の仲間との“決別”を味わった。
「入学したときからずっと連合チームでやってきたので、それ自体は自分にとってはごく当たり前のこと。普通の学校より指導してくださる先生方が多かったり、連合相手の他校の選手と仲良くなれたり、人数が少ないぶん一人で何百球も練習できたりとメリットもある。ただ、自粛期間が続くなかで夏の大会がどうなるのか、どこと連合を組むことになるのかは自分ではどうしようもできないこと。不安な気持ちもありました」
連合チームとは、部員が足りてない学校同士の大会出場を可能にするための救済措置。それまでどれだけともに練習を重ねていようとも、部員が9人揃った時点で否応なく単独出場が優先される。休校が長引くなかで各校とも新入部員の数が把握できなかった今年。大会開催の是非はもちろんのこと、単独で出られるのか、それとも例年通り連合を組むのか、組むとしたら人数的にどこと組むのがバランスがいいのか……連合チームを取り巻く様々な事情が一斉に噴出した。
先行きの見えない状況が続くなか、チームを去る選択をしたのが同じ関宿で二人三脚で野球を続けてきた主将の尾形拓海だ。ひとり親家庭で3人兄妹の尾形は、代替大会開催が決まった6月、家庭の事情と進路を理由に出場辞退を申し出た。「夏の大会が中止になって、そこで気持ちが切れちゃったんでしょう」と関監督。戸井田も「1年から同じクラスで、3年間ずっと一緒にやってきた仲間。家も近所で何度か泊りに行ったときも家のことを手伝っていて、事情はよくわかる」と親友を慮りつつ「最初は、尾形が出ないのなら自分も出ないという気持ちだった」と打ち明ける。