「欲が出ました」故郷で“凱旋登板”した元ロッテ・BC栃木成瀬の背中を押したもの

BC栃木・成瀬善久選手兼任コーチ【写真:細野能功】
BC栃木・成瀬善久選手兼任コーチ【写真:細野能功】

試合後のインスタライブには思わぬ“視聴者”も…

 円熟味のある投球術が詰まっていた。ルートインBCリーグ栃木ゴールデンブレーブスは、小山運動公園野球場で埼玉武蔵と対戦。今季から投手兼投手コーチとして加わった、ロッテやヤクルト、オリックスでプレーした成瀬善久投手が故郷・小山で“凱旋登板”を果たした。最速137キロながら、変化球を巧みに操り、5回を投げ、2安打1失点。勝敗は付かなかったが、地元のファンを感激させた。

 成瀬はすでにリーグ戦に登板しているが、本拠地では初登板。マウンドに上がると温かい拍手が送られた。

「先発はいいなと思いました。名前を呼ばれ、拍手をしてくれてうれしかったです。僕の中で、もっといい投球をしたいと欲が出ました。中学生時代(小山市桑中学)の同級生も応援に来てくれて、その前で投げられてよかったです。地元に帰って投げられるのは、幸せなこと」と感慨深げだった。

 2-0の5回にはクリーンアップに連打を許し、無死一、三塁のピンチを招いたが、元楽天の片山をスライダーで空振り三振を奪った。内野ゴロで1点を失ったが、NPBを目指す若手に配球の妙を見せた。130キロ台のストレートをより速く見せるため、110キロから115キロのカーブと、縦に変化する120キロ台のスライダー、チェンジアップを縦横に駆使した。

「意識はいい所から、ボールになる(球と)と思って投げました。ストレートを待っていたので、ああいう打ち方になったと思う。三振をとれてよかった」と狙い通りの投球で打者を翻弄した。NPBで最優秀防御率、最優秀投手(最高勝率)のタイトルを獲得したことのある投手がルートインBCリーグの舞台で投げることは、成瀬の野球人生だけではなく、リーグ全体の“宝”となるだろう。

 後続が相手打線につかまり、試合は4-6で敗れた。自身の登板を振り返るだけでなく「早打ちしてくるチーム。もう少しかわすというか、様子を見てもよかった。防げる部分はあった。時間があいたら(そういうことも)話せていけたらと思う」とコーチの顔ものぞかせた。

 試合後はグラウンド上で予定していた成瀬のインスタライブは、球場内に変更されたが、多くのファンからコメントが寄せられた。中にはロッテ時代のチームメート・内竜也投手もいた。成瀬は「(内は)2軍にいるので、何時から(インスタライブをやるのか)聞いてきたりしていました」と笑みを浮かべながら、“内幕”を明かした。

 成瀬の投球を見守った栃木・寺内崇幸監督は「打席ごとに、打者の反応を見ているし、いい所を学んでほしいですね」と“成瀬効果”を期待。成瀬も「次回はいつになるかわかりませんが、投げるからには選手の手本になるような投球がしたい」。野球人生を終えるのはまだ先になる。

(細野能功 / Yoshinori Hosono)

RECOMMEND

KEYWORD

CATEGORY