「甲子園に憑りつかれていた」 巨人坂本を育てた鬼監督が語る脱・勝利至上主義の理想

コロナ禍で省みたこれまでの指導、勝利至上主義から脱却する大きな機会に

「自分は今まで何をやってたんだろうか、自分の指導は間違っていたんじゃないかと、本気で考えさせられました。適度な休養もさせず選手を練習漬けにして、本当に昭和の高校野球をやっていたなと。勝つことばかり求めて、私自身がそのプレッシャーに負けていた。過去にもこういう戦い方をしていれば、もっと甲子園に行けたんじゃないかとすら思ってます」

 手腕を買われ強豪私立の監督を任される以上、結果がすべての世界。周囲からのプレッシャーゆえに県外の有望選手を多数獲得したり、過度な練習量を課したり、レギュラーと控えの練習を分けたりとこれまで信念を持って勝利至上主義を貫いてきたが、今回の甲子園中止で自らの考えを改め、肩の荷が下りた部分もあるという。

「甲子園に憑りつかれていた。今は毎日が楽しくて、これぞ高校野球だと。高野連に是非提案したいのは、今後もこういう(3年生全員が出場できる)システムを県大会だけでも採用できないものか。努力が報われるとは限らないが、それが報われたときほどうれしいことはない。純粋に監督から、ファンになる瞬間がありましたから。来年以降、私がもとの勝利至上主義に戻ることがないよう、お前らしっかり見張っててくれよと今の3年生には伝えています」

 今後は勝ちあがるにつれさらに厳しい戦いが続く。主力投手が2年生の今年、3年だけで勝ち進む事には難しさも伴うが「甲子園がなくなったなかで3年生がどういう風にやるのか。粘り強く諦めない姿を後輩たちにも見せたい。1試合でも多く勝つという目標と3年生主体という理想は両立させたい。2年生の力を借りざるを得ないところでは借りますが、その2つを両立できる手応えを感じました」と金沢監督。チーム一丸と勝つことの両方を目指しその理想を証明するためにも、甲子園のない特別な夏に茨城の頂点を狙う。

(佐藤佑輔 / Yusuke Sato)

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