フェースガードは日本発祥 事故の度に進化した、ベースボールキャップ、ヘルメットの歴史

フェースガード付きヘルメットを使用するヤンキースのスタントン【写真:AP】
フェースガード付きヘルメットを使用するヤンキースのスタントン【写真:AP】

アメフトを参考にしたフェースガードは日本発祥、その後米国に逆輸入された

 日本の職業野球でもヘルメットは長らく普及しなかった。選手の中には南海の主軸打者飯田徳治のように、頭部を守るために帽子の裏側に布を縫い込む選手もいたが、ヘルメットが普及したのは1960年に入ってからだ。1958年に軽くて丈夫なポリカーボネートという先進の素材が開発され、これを使用したヘルメットが発売。普及した時期のヘルメットは頭部(クラウン)を覆うだけの形状だったが、次第に耳当て付きのヘルメットが普及し始める。

 1970年8月26日、甲子園での阪神対広島戦で、阪神の田淵幸一が外木場義郎の投球を左側頭部に受けて昏倒。一命はとりとめたものの、長期離脱を余儀なくされた。NPBはこの事件をきっかけに「耳当て付きヘルメット」を導入。しかし王貞治や衣笠祥雄など「視界が遮られる」という打者もいたために義務化されるには至らなかった。その後、1996年になって耳当て付きヘルメットの着用が義務化。高校野球では1995年から耳当て付きヘルメットの着用が定められている。

 フェースガードが付いたヘルメットは実はNPBが発祥だ。1979年6月9日、日生球場の近鉄対ロッテ戦で、近鉄のチャーリー・マニエルが八木沢荘六から顔面に死球を受けて顎を複雑骨折。8月17日に復帰したが、このときマニエルはアメリカン・フットボール用のフェースガードがついたヘルメットをつけていた。それ以前からデーブ・パーカーなどフェースガードを付けたMLB選手も一部いたが、以降、フェースガードのついた野球用ヘルメットも開発されるように。今ではMLBでもフェースガードつきのヘルメットが主流になっている。

 現在の公認野球規則3.08では、
1(a)プレーヤーは、打撃時間中および走者として塁に出ているときは、必ず野球用ヘルメットをかぶらなければならない。
4(d)捕手が投球を受けるときは、捕手の防護用ヘルメット及びフェイスマスクを着用していなければならない。
5(e)ベースコーチは、コーチスボックスにいるときは、防護用のヘルメットを着用しなければならない。
6(f)バットボーイ、ボールボーイまたはバットガール、ボールガールは、その仕事に携わっているときは、防護用の両耳フラップヘルメットを着用していなければならない。

と、打者だけでなく走者、捕手、ベースコーチ、バットボーイ、ボールボーイに加え、球審もヘルメットの着用が義務付けられている。

 こうしてみると、野球のヘルメットは死球などの事故とともに着用ルールが強化されてきたことがわかる。ベースボールキャップ、ヘルメットは野球のファッションの一要素ではあるが、それ以前に「選手の安全を守る」ためのアイテムなのだ。

(広尾晃 / Koh Hiroo)

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