「アパレル会社起業」を夢見る球児 拓大紅陵4番が“描く”未来のデザイン

拓大紅陵・小野寺翔真【写真:宮脇広久】
拓大紅陵・小野寺翔真【写真:宮脇広久】

元ロッテの和田監督と元ヤクルト飯田コーチの元プロコンビがチームを指導

 高校野球千葉大会が7日、市原市のゼットエーボールパークなどで行われ、元ロッテ投手の和田孝志氏が監督、元ヤクルト外野手でゴールデングラブ賞7回を誇る飯田哲也氏がコーチに就任し強豪復活を目指す拓大紅陵は、第8地区準々決勝で翔凜を9-2の7回コールドで下した。

 勝負強さが光ったのが、4番・遊撃手の小野寺翔真内野手(3年)だ。1回無死満塁で左前へ先制2点適時打。2回にも2死一、二塁で中越え2点二塁打を放ち、4打数2安打4打点で中軸の役割を果たした。「いつも仲間がつないでくれるので、返して当たり前という感覚で打席に立っています」と頼もしい。

 昨夏の千葉大会(3回戦敗退)で2年生にして4番を務めただけに、こだわりは人一倍だが、部員94人の大所帯で競争が激しく、そのポジションは決して安泰ではない。「4番になると仲間も期待しますし、相手も警戒しますが、それ以上に自分のレベルを上げて相手にプレッシャーを与えられるのがベスト」と言い切る。和田監督も「おとなしい選手が多いチームを鼓舞する、ムードメーカーでもある」と信頼を寄せている。

 卒業後の進路がまたユニークだ。「自分は大学に進学せず、服飾系の専門学校に進みます」と清々しい笑顔を浮かべた。「洋服を流通して、ゆくゆくは自分でアパレル会社を起業して、自分でデザインした洋服を売りたい。それが中学時代からの夢です」と明確な未来予想図を描いている。

 だから、「野球は高校まで」と入学前から決めていた。春4回、夏5回の甲子園大会出場を誇る名門の中軸を張る男の実力を惜しむ声もあるが、「自分が1番やりたいことなので、そこはブレずにやりたい」とキッパリ。和田監督も「強い意志があるので、野球でなくても成功するのではないか」と後押しする。

 確かに、和田監督や飯田コーチのように野球を一筋に極め、母校に指導者として戻ってくる人生も素晴らしいが、18歳の若さに任せて全く違う世界へ打って出るのもいい。

 今大会で優勝するか、もしくは敗れた時点で、野球人生に終止符を打つことになるが、悔いは残さない。「甲子園という目標はなくなりましたが、世界中が新型コロナウイルスのパニックの中で大会が開催されていることに感謝し、世界中に自分たちの姿を見てもらって、元気になってもらえたらと思います」。さすがに、発想のスケールが人一倍デカイ。

(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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