「前田監督を追いかけている」 帝京に敗れた関東一監督が感じた名将の存在

試合後、ベンチで泣き崩れる関東一ナイン【写真:荒川祐史】
試合後、ベンチで泣き崩れる関東一ナイン【写真:荒川祐史】

東東京を近年引っ張る44歳の関東一・米沢監督が71歳の名将に敬意

 2020年夏季東西東京都高等学校野球大会の東東京大会の決勝戦が8日、大田スタジアムで行われ、帝京が延長11回サヨナラ勝利で関東一を3-2で下し、2011年以来、9年ぶり13回目の頂点に立った。関東一は帝京に惜しくも敗れ、夏の東東京大会連覇はならなかった。

 優勝まであと2アウトに迫っていた。しかし、無情にも9回1死から関東一は帝京・前田三夫監督の執念の采配の前に同点に追いつかれた。頼みのエース・今村拓哉投手がつかまった。

 関東一・渡邊貴斗主将は「悔しいです。今村(拓哉)は公式戦で一番いい状態だった。今村なら抑えてくれると思ったけど、相手がすごかった」と肩を落とした。エンドランにスクイズ……そして、11回、フィナーレは訪れた。1死一二塁、3番手・2年生の市川祐が帝京の5番・新垣煕博に左翼の頭上を越えるサヨナラ打を浴びた。

 試合後には、裏に戻らずベンチの中で泣きくずれ、悔しがり声を出していた関東一高ナインが印象的だった。表彰式の際も、涙を隠せなかった選手もいた。昨年の秋季東京大会3回戦で敗れた帝京を9回1死まで追い詰めただけに、悔しい敗戦となった。

惜しくも準優勝に終わった関東一・米沢監督(中央)【写真:荒川祐史】
惜しくも準優勝に終わった関東一・米沢監督(中央)【写真:荒川祐史】

 東東京の勢力図は80、90年代の帝京から、近年は44歳の米沢監督が率いる関東一や二松学舎大付らが先頭を走るようになっていた。帝京の夏優勝が9年ぶりであったように、時代は移っていた。

 だが、またその構図が変わろうとしている。関東一は秋に帝京に敗れた。昨年のリベンジを期して挑んだが、この夏も惜敗だった。米沢監督は「秋負けてるので、そこはもう意地ですよね。1年のうちに2回も負けたくないですし……。ただ、やっぱり東東京は帝京高校、そして前田監督さんというのは、追っかけている存在で前にいる。分かりきっていることなので、そこに僕らも挑みました」。甲子園出場26度の名将の底力を痛感した。

 甲子園という目標が消えた大会だったが「うちはもう、変わらない夏だったなと思っています。本当に強い思い、熱い思いで彼らは毎年と同じようにやってくれた」とナインを称えた。「3年生はみんなよく頑張ってくれた。選手の入れ替えもしましたけど、(大会の中で)投手はみんな投げさせられたこと、野手はみんなヒット一本打ってくれたことが一番、嬉しかった」と語った。悔いはない。選手が誇りを持って、次のステージに進み、活躍することを願った。

「今回はまた跳ね返されたので、なんとか次勝てるように努力します。帝京高校も含めて勝ち抜けるような練習をしたい」と語った米沢監督。準優勝で敗れた悔しさを胸に、来年、東東京の頂点を奪い返す。東東京に群雄割拠の時代がやってくる予感が漂う。

(上野明洸 / Akihiro Ueno)

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