692日ぶり白星の藤浪晋太郎 専門家が見る勝因と「まだまだ良くなる」理由とは?

まだ「“抜け球”が全体の7割」、それで抑える藤浪の類稀なる力量

「勝因は圧倒的な球威。そして荒れ球の中でも、要所でいいコースに決まっていたことでしょう」と三井氏はこの日の投球を分析。点の取り合いとなっていた3回、先頭の村上に中前打されたものの、続くエスコバーを142キロのフォークで投ゴロ併殺に仕留め、無失点で切り抜けた。5回に村上に9号ソロを浴びた直後にも、エスコバーを内角高めの151キロ速球で一邪飛に切って取り、相手を勢いづかせなかった。

 ヤクルトは藤浪対策として1~4番と6、7番と6人の左打者を並べて臨み、山田はスタメンを外れていた。「シュート回転してくる藤浪の球は、右打者には打ちにくい。左打者を並べたのは理にかなっているが、藤浪の球威を打ち返せたのは1番の坂口、3番の青木、4番の村上だけ。力勝負でねじ伏せましたね」と三井氏は見る。

 もっとも、ルーキーイヤーの2013年から3年連続2桁勝利を挙げていた頃の藤浪と比べると、「あの頃のストレートは、縦のスピンが利いていてバンバン空振りを取れた。今は腕がやや横振りになっている分、シュート回転する。まだまだ良くなると思うし、かつての藤浪のボールをぜひもう1度見たい。“完全復活”を期待しています」と語った。

 三井氏のチェックによると、この日の投球でもなお「指にしっかりかかっていない“抜け球”が全体の7割」。それでも相手に決定打を許さず、勝利をものにできてしまうところに、藤浪の類稀なる力量が表れている。指にかかったボールが増えれば、どんなすごい投球を見せてくれるか。2年ぶりの白星は、復活劇の序章に過ぎない。

(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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