「ミスショットなしの一振りで…」 専門家が分析、阪神が巨人戸郷を攻略できた要因
今季初勝利もまだ残る課題を元巨人スコアラー・三井氏が分析
■阪神 5-4 巨人(4日・甲子園)
セ・リーグ首位を独走する巨人は4日、甲子園球場で行われた阪神戦に4-5で惜敗し、連勝が5で止まった。2年目・20歳で今季新人王有力候補の戸郷翔征投手は、6回途中にプロ入り後ワーストの5失点でKOされ、今季3敗目を喫した。自身4連勝中で、同僚の菅野の9勝に次ぐリーグ2位タイの7勝を挙げていた戸郷を、阪神打線が今季初めて、攻略できたのはなぜだったのか。
150キロ超の速球、得意のスライダー、フォークなどを駆使して、日の出の勢い。阪神に対しても今季2戦2勝、対戦防御率0.66に抑え込んでいた戸郷だが、この日は勝手が違った。2回、先頭の大山に先制14号ソロを被弾。なおも1死一、三塁から、西にセーフティースクイズを決められ追加点を許した。3-5回は無失点に抑えたが、6回にはサンズに15号2ラン、同い年の小幡に左線適時打を浴びて降板した。
かつて巨人で22年間スコアラーを務めた三井康浩氏は「大山とサンズの本塁打2本がポイントでした」と分析。「戸郷は相手を追い込むと、いろいろな球種で勝負できる投手。相手打線としては、狙い球を絞り、なるべく早いカウントでミスショットせず、一振りでとらえることが重要になります」と説明した。
大山はカウント3-1から、高めに来たスライダーを左翼席へ運び、前回対戦で巨人に3試合連続零封負けを喫していたチームにとっては、対巨人29イニングぶりの得点となった。「戸郷の得意球のスライダーを打ったという点で、相手にショックを与え、自軍に勢いをもたらしたと思います」と三井氏。サンズはカウント2-1から、真ん中低めのストレートをバックスクリーンへ叩き込んだのだった。
とはいえ、巨人に一矢報いた阪神にも、勝利の中で首をひねらされた一幕があった。2点リードの6回、先頭の糸井が一塁強襲の二塁打。続くサンズの初球に、代走・江越が三盗を成功させたのだ。タイミングはアウトに見えたが、捕手・炭谷の送球がワンバウンドになった分、セーフに。直後、サンズの値千金の2ランが生まれた。
三井氏は「どうしても追加点が欲しかったあの場面で、ベンチから三盗のサインが出ていたとは考えにくい。江越が自分の判断で走ったのかもしれないが、リスクを負って走る場面ではないし、実際タイミングはアウトだった」と指摘。「首位の巨人を追おうとするなら、ああいう細かい部分の徹底が重要になると思います」と語った。2位・阪神と首位・巨人とのゲーム差は依然6.5もある。チームをアップデートしていかないと、その背中はとらえられない。
(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)