屈強な投手陣と“柳田頼み”の攻撃陣… 前半戦データが示すホークスの長所と短所
傑出した投手陣の安定感、被本塁打はリーグ最少に
次に、ソフトバンクホークスの各ポジションの得点力を両リーグ平均と比較し、グラフで示した。
グラフでは、野手はポジションごとのwRAA、投手はRSAA(失点ベース)を表しており、赤色なら平均より高く、青色なら平均より低いということになる。
今季の投手陣の安定感は12球団でも群を抜いている。
先発 防御率3.33 被打率.230 奪三振率8.33
救援 防御率2.75 被打率.213 奪三振率9.01
防御率は先発、救援ともにリーグ最小の数値を誇っており、ホームランテラスの影響でホームランが出やすいとされるPayPayドームを本拠地にしながら、被本塁打60というのもリーグ最少である。
救援投手陣は前年にも増して強力だ。特にセットアッパーのモイネロは最高球速158km/h、奪三振率15.85と圧巻の数字を記録している。また今季は救援に回っている高橋礼や嘉弥真新也、泉圭輔、川原弘之、松本裕樹といった面々が随所で貢献し、クローザーの森唯斗までつないでいる。
攻撃陣では、センター柳田の攻撃力が異次元の領域に達していると言っても過言ではないだろう。今季はストライクゾーンにきた球を高い確率で積極的に振るようになり、昨季までゴロが多いのが特徴だった打球がフライボールとして上がるようになった。その結果、本塁打率は2018年の13.2よりもハイペースの11.9となっている。
ただ、他のポジションに目を向けると、リーグ平均より突出した攻撃力を持つポジションはない。8月下旬からチームに合流したグラシアルとデスパイネの攻撃力が加わり、中村晃や栗原の起用もあるレフトと指名打者がプラスに転じているが、内野陣とライトのポジションではマイナスとなっている。また、1番打者の出塁率が.295、2番打者も.282と柳田の前を打つ打者の出塁率が低いため、得点効率も悪くなっている。
後半に向けて、内野手の攻撃力強化、さらには柳田の前を打つ上位打線の出塁率向上が急務となるだろう。
鳥越規央 プロフィール
統計学者/江戸川大学客員教授
「セイバーメトリクス」(※野球等において、選手データを統計学的見地から客観的に分析し、評価や戦略を立てる際に活用する分析方法)の日本での第一人者。野球の他にも、サッカー、ゴルフなどスポーツ統計学全般の研究を行なっている。また、テレビ番組の監修などエンターテインメント業界でも活躍。JAPAN MENSAの会員。近著に『統計学が見つけた野球の真理』(講談社ブルーバックス)『世の中は奇跡であふれている』(WAVE出版)がある。