開幕好調だった楽天はなぜ夏場に失速? “酷使”のしわ寄せデータで明らかに
茂木栄五郎&小深田大翔、遊撃手の大きな貢献に注目
次に、楽天の各ポジションの得点力を両リーグ平均と比較し、グラフで示した。
グラフでは、野手はポジションごとのwRAA、投手はRSAA(失点ベース)を表しており、赤色なら平均より高く、青色なら平均より低いということになる。
二塁・浅村、三塁・鈴木大の移籍組と、右翼とDHのツープラトン起用のロメロ、ブラッシュの外国人組の貢献が目立つグラフではあるが、遊撃の大きな貢献にも注目だ。6、7月は茂木栄五郎が遊撃のスタメンとして、打率.323、長打率.508、OPS.930と上位打線の核として活躍。8月に入ると、ルーキーの小深田大翔が台頭し、遊撃のレギュラーに。辰己涼介、田中和基とともに走力による得点貢献を狙った起用と考えられ、そのため茂木が三塁、鈴木大が一塁に入るオーダーに再編。数多くのポジションでアドバンテージを稼ぐ打線の構築でさらなる得点力の増加を目論む。
ただ、9月以降はチーム打率.229、OPS.695、平均3.89得点と攻撃陣が沈滞。さらに則本、塩見の登録抹消の影響か、WHIP1.54、防御率4.73と投手陣も付き合うように低迷した。
9月21日に、広島から金銭トレードでDJ・ジョンソンを獲得し、福山博之を支配下登録。どちらも即日1軍登録するなど、急造ながら投手陣の再建を図る。9月19日からの連勝が、巻き返しのきっかけとなるだろうか。
鳥越規央 プロフィール
統計学者/江戸川大学客員教授
「セイバーメトリクス」(※野球等において、選手データを統計学的見地から客観的に分析し、評価や戦略を立てる際に活用する分析方法)の日本での第一人者。野球の他にも、サッカー、ゴルフなどスポーツ統計学全般の研究を行なっている。また、テレビ番組の監修などエンターテインメント業界でも活躍。JAPAN MENSAの会員。近著に『統計学が見つけた野球の真理』(講談社ブルーバックス)『世の中は奇跡であふれている』(WAVE出版)がある。