最下位オリックス、低迷の要因は? データから見る深刻な鷹&ロッテ“恐怖症”
攻撃陣は“吉田正尚頼み”でリーグ最低の得点数
次に、オリックスバファローズの各ポジションの得点力をリーグ平均と比較し、グラフで示した。
グラフでは、野手はポジションごとのwRAA、投手はRSAA(失点ベース)を表しており、赤色なら平均より高く、青色なら平均より低いということになる。
攻撃において、レフトとライトがプラス評価なのは、吉田正尚がレフトとして39試合、ライトとして32試合に先発出場していることによるものだ。吉田は現在、首位打者争いでトップを独走し、OPSも1に迫りリーグトップ3に食い込んでいる。吉田の三振数は9月27日時点でわずか22、でPA/K(打席数/三振数)16.8はリーグ2位の中村晃の9.79と比較してもダントツの少なさを示している。卓越したバットコントロールの賜物といえるだろう。
また、キャッチャーとショートでリーグ平均以上の貢献が見えているものの、やはり昨季からの懸案であった得点力不足の解消には至っていない。1試合平均得点はリーグで唯一の3点台。期待のアダム・ジョーンズも打率.255、OPS.742と苦戦している。
期待の先発投手陣は、山岡泰輔が今季2戦目で3球を投じたところで左脇腹を痛め降板して翌日に登録抹消。2か月もの間の離脱はチームにとって計算外のアクシデントだった。ローテーションの主軸となった山本由伸は14試合に先発し10QS(71.4%)、8度のハイクオリティスタート(HQS、57.1%)、WHIP1.00、奪三振率10.25(リーグ1位)と大きく貢献してが、対戦チームのエース格と対戦することも多く、タフロス(QSを記録しながら敗戦投手)3回と勝ち星に恵まれていない。
山本に追随するように田嶋大樹が先発14試合で9QS(64.3%)とローテーションの一角を担っているが、先発投手の駒不足は否めない。また救援投手陣の防御率4.24はリーグワースト2位。投手運用に苦心していることが伺える。
前任の西村徳文監督は、走力のある選手を上位打線に据えるオーダーを組むことが多かったが、出塁率が低ければその足を生かすこともできず、上位打線の攻撃力が大きくマイナスとなり、吉田正の前のチャンスメイクもままならなかった。
8月21日より中嶋聡2軍監督が1軍監督代行として指揮を執るようになったが、そこから中川圭太、杉本裕太郎、大下誠一郎、宜保翔、太田椋といったプロスペクトを積極的に1軍に引き上げ、試合に起用している。自力優勝、自力クライマックスシリーズ進出が消滅したチーム状況の中、来季を見据えた選手起用で新陳代謝と得点力不足の打開を図っているものと思われる。
鳥越規央 プロフィール
統計学者/江戸川大学客員教授
「セイバーメトリクス」(※野球等において、選手データを統計学的見地から客観的に分析し、評価や戦略を立てる際に活用する分析方法)の日本での第一人者。野球の他にも、サッカー、ゴルフなどスポーツ統計学全般の研究を行なっている。また、テレビ番組の監修などエンターテインメント業界でも活躍。JAPAN MENSAの会員。近著に『統計学が見つけた野球の真理』(講談社ブルーバックス)『世の中は奇跡であふれている』(WAVE出版)がある。