「救援のマイナス指標も」 元MLB右腕・藪恵壹氏が求めるリリーバー成績の“可視化”

セーブ数やホールド数には表れないマイナス要素「ブローン・セーブ」や「IRA」も導入すべき

 藪氏によれば、セットアッパーが固定しきれず、守護神まで繋ぐ流れで迷走しがちなのが、阪神だという。阪神は開幕当初、クローザーとして期待された藤川球児が離脱。その後、ソフトバンクから移籍してきたスアレスが守護神となったが、8回はガンケル、エドワーズ、岩崎優、馬場皐輔など定まらず。「こうなると誰が呼ばれるか分からないから、投手は準備をするタイミングを計れず、無駄にエネルギーを使ってしまうことにもなりかねません」という。

 役割を固定することで、投手の士気を高められた典型は、9月末にロッテにトレード移籍した澤村拓一だ。巨人では155キロを超える剛球を持ちながら制球が定まらず。今季は3軍での調整も経験した。だが、新天地では気分も新たに8回を任されると、制球難は影を潜め、9回の益田直也に繋ぐセットアッパー役を果たしている。

 藪氏は、セットアッパーとクローザーの固定を提言すると同時に、メジャーでは公式記録として明記される「ブローン・セーブ(blown save)」の導入も訴える。ブローン・セーブとは、いわゆるセーブ失敗の意味。セーブがつく条件下で同点に追いつかれたり、逆転された時につく記録で「BS」と表記される。メジャーでは、救援投手を評価する基準の1つとして、ホールドやセーブ数と並び、ブローン・セーブが用いられる。

「日本でも、以前はなかったホールドやクオリティスタートという概念が定着してきました。ここで取り入れたいのがブローン・セーブですね。2試合連続でブローン・セーブした守護神は立場が危うくなるし、3度連続で失敗したらセットアッパーと立場が入れ替わる。プラス要素を示す指標だけではなく、マイナス要素も明記されることで、選手起用がより客観化され、説得力を持つと思います。ファンが手軽に閲覧できるデータとしてブローン・セーブであったり、前の投手が残した走者を何人生還させたかを示すインヘリティド・ランズ・アラウド(IRA)が明記されると、その投手の価値がより分かりやすくなるはずです」

 時代の移り変わりとともに、少しずつ変化してきた野球。新たな起用法や価値基準が導入されることで、また面白みが深まるのかもしれない。

(Full-Count編集部)

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