「捕手でも強肩。二塁、遊撃も」 名伯楽が明かす阪神1位・佐藤輝明の超人伝説
近大・田中監督が明かす佐藤の魅力「逆方向へロングを打てる。フットワーク、グラブさばき、ハンドリング、肩の強さの全てがハイレベル」
近大の左の長距離砲、佐藤輝明外野手は26日のドラフト会議で、4球団から1位指名を受け、抽選の末に阪神が交渉権を獲得した。身体能力抜群の“超人”は、攻守走の全てで様々な可能性にあふれている。
身長186センチ、体重94キロの体格に恵まれ、左打席からのパワフルな打撃は、ソフトバンクの柳田や、近大の先輩でもある阪神・糸井を彷彿とさせる。主に右翼から左翼方向へ吹く、本拠地・甲子園球場特有の“浜風”は、佐藤にとって逆風となるが、「浜風に負けないような強い打球を打ちたい」と頼もしい。もともと「強いスイングをして、強い打球を打つ」が佐藤のポリシーだ。
といっても、引っ張り一辺倒の打者ではない。恩師の近大・田中秀昌監督は、かつて上宮高のコーチとして元木大介氏(現巨人ヘッドコーチ)、同監督として元メジャーリーガーの黒田博樹氏、東大阪大柏原高監督時代には巨人外野手の石川、近大監督就任後も楽天内野手の小深田らを育てた名伯楽で、「私の経験から見て、野手としてプロ野球に進める条件の1つは、逆方向へロングを打てること。佐藤も左翼方向へ本塁打を打てる。対応力がつけば、結果は出ると思う」と語る。佐藤が樹立した関西学生リーグ新記録の通算14本塁打は、全てバックスクリーンから右翼方向だというが、一昨年秋の明治神宮大会1回戦の筑波大戦では、神宮球場の左翼席へ放り込んでいる。
守備は、内野でも外野でもOK。兵庫・仁川学院高時代は捕手も務めた。田中監督は「大学ではチーム事情で捕手をやらせることはなかったが、強肩で、入学当初は二塁送球のタイムが1.8秒台と非常に速かった」と振り返る。
大学1年の時は外野、2年からは主にサードを守った。田中監督は「フットワーク、グラブさばき、ハンドリング、肩の強さの全てがハイレベル。2年生の時には、セカンドとショートでノックを受けさせたこともある。昨年6月の大学日本代表候補合宿で右肘を痛め、昨秋は一塁手として起用したが、あの故障がなければ、今季セカンド、ショートで使った可能性もあった」と明かす。「ポジションは阪神タイガースが決めることで、佐藤本人もこだわらずにチャンスがある所で勝負する覚悟だが、私はできれば内野で活躍してほしいと思っている」と本音を口にした。
豪快な打撃のイメージとは裏腹に、守備では何でもこなせる器用さを持ち合わせているようだ。50メートル走6秒0と足も速く、佐藤は「トリプルスリーもいつか達成してみたい」と意欲を示す。
甲子園球場の所在地である兵庫県西宮市出身で、まさに“地元中の地元”。小学6年の時には、「タイガースジュニア」に選出された。運命の糸で結ばれた球団で、豊かな潜在能力が一気に開花するか。
(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)