なぜホークスはリーグVできたか? 元コーチが指摘する記録に残らない好走塁

主力の活躍、若手の成長はもちろん記録に残らないプレーも勝利に「その積み重ねが大きなものをもたたす」

「野手は計算できる柳田を中心に、中村晃、グラシアルの安定感、松田宣と甲斐は苦しみに耐えながら効果的な活躍を見せ、周東の成長は頼もしい限りだった。強烈なライバルがいる中で栗原も1年間躍動したのは大きかった。数字以上の貢献度があることはいうまでもなく、内外野をそつなくこなせる守備力に作戦(特に犠打)に加われる打者だったことも、工藤監督に我慢をして使わせた大きな要因ではなかったか。バックアップの明石、川島は大きな存在感を示し、若い選手を支えていたように思う。いずれにせよ、ここにきての周東、川瀬の成長は監督冥利に尽きるのではないだろうか」

 序盤は不在のキューバ勢の代役として期待されたバレンティンの調子が上がらなかったが、その後は栗原や中村がカバー。森脇氏は「柳田が元気だっただけに、その前後を打つ打者が課題だったが、栗原が頑張り、7月から復帰した中村晃も素晴らしい仕事をした。みんなの力の結晶ではあるが、攻守において彼の復帰は大きかったし、中村晃抜きではこの優勝は語れない。私の友でもあった川村隆史コンディショニング担当のユニホームを持つ中村晃に熱いものを感じた」と、選手会長としてチームを引っ張った男を称えた。

 そして森脇氏は、この日の中村の記録に残らない細かなプレーにも、ソフトバンクの強さを感じたという。それは初回の偽盗だった。中村は1死から左前打で出塁。柳田は三振に倒れたが、グラシアルが右前打を打った打席で偽盗をして相手バッテリーにプレッシャーをかけていた。

 森脇氏は「地味な動きだけど、あの場面で中心選手がしっかりああいうことをやっているのが、ホークスの強みだと思う。当然、他の分野でもその習慣は出る」と指摘。7回にはグラシアルの代走で出た真砂が、2死一、三塁で迎えた明石の打席でハーマンの暴投の間に一塁から二塁に進んだが「アウトタイミングゴーのケースではあるが、あれも好スタート、好走塁だった」といい「常に全力プレーの松田宣を筆頭に、中心選手が試合の中で示していることが若手への教材になる。その積み重ねが大きなものをもたらす」と、主力のプレーがチームの底上げをもたらしていることを、優勝の要因に挙げた。

 今季はコロナ禍でレギュラーシーズンの試合数が143から120へと縮小される中、111試合目で歓喜をつかんだソフトバンク。若手の台頭の陰には、こうした主力の手を抜かない真摯なプレーが隠されていた。

(Full-Count編集部)

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