「プロに行くとは…」 元中日ドラ1の“恩人”が語る広島1位・栗林良吏の進化録

栗林の“弱点”は性格の良さ「今持っているもので十分勝負できる。あとはメンタルだけ」

 コーチ就任からわずか1年弱。山内コーチの指導を日々吸収していった栗林の成長が、結果として出た瞬間だった。

「栗林は常にいろいろ質問をしてくる選手でした。僕は、今の栗林にとって何が必要かという話をした。何を話したか忘れるくらい、2年間で本当にいろんな話をしましたよ。課題を後回しにせず、積極的に取り組む選手だったので、何でもすぐに克服できていましたね」

 そして18年秋のドラフトでは、部長、監督、栗林とともに山内コーチも会見場に座り、一緒に指名を待った。だが、2位までに指名されなかったら社会人という条件をつけていた栗林を指名する球団はなかった。07年の大学・社会人ドラフト1位で中日に入っている山内コーチは「自分のドラフトの時と同じような気持ちだった」といい「僕の個人的な見立ては3位が妥当かなと。縛りがなければあの年でもプロに行けると思っていた」。指名のなかった栗林に言葉をかけることはできず、無言で背中をポンポンと2度叩いた。

 あれから2年。大学時代よりもさらに成長した栗林は、カットボール、カーブ、フォークと、どの変化球も決め球で使えるまでにレベルを上げた。山内コーチは、栗林のボールについて、こう解説する。「フォークは阪神の中田賢一さんや中日の鈴木翔太のように、手前で一気に落ちる。直球は中日の祖父江大輔みたいな感じ。性格は祖父江の方が強気でプロ向きですが、球は栗林の方がいい。ぶん投げじゃなくて、リリースだけで150キロ出せるので、使える150キロだと思います」。

 山内コーチが栗林のプロ入り後、唯一心配しているのが、性格の良さだという。「武器は十分備わっているので、今持っているもので十分勝負できる。あとはメンタルだけ。プロの世界って『なんだこいつ?』って思う性格が悪い選手のほうが大活躍していて、すごくいい人って活躍できなかったりする。彼は根が優しいので、ガッついて、強い気持ちで戦えるかどうか。プロは、お前がダメなら他を使う、という厳しい世界なので、自分でやらないといけないし、学生の時みたいに周りが手を差し伸べてくれる訳ではない。孤独な世界なので、悲しい気持ちにならずにやっていって欲しいですね」。

 プロで9年間プレーし、主に先発として57試合17勝15敗の成績を残した山内コーチ。かつての大学時代の恩師も、教え子のプロでの活躍を心待ちにしている。

(福岡吉央 / Yoshiteru Fukuoka)

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