リーグ3連覇逃した西武が首脳陣のテコ入れしなった訳 渡辺GMが語る意図とは?
同じ顔ぶれで戦うことで阿吽の呼吸が生まれるメリットも…
外部招聘が少ないのは、資金的な問題もあるのだろうが、長年同じ顔触れで戦っていることによって、首脳陣間、首脳陣と選手の間に阿吽の呼吸や信頼関係が生まれているのも確か。野手出身の辻監督は今季、基本的に西口文也投手コーチに継投を任せていた。試合後に「投手コーチから『代えます』と言われて、『えっ!?』と思った」とコメントしたことがあったほどだ。
その中で、黒田哲史1軍内野守備・走塁コーチは、「球界随一の三塁コーチ」と判断力を高く評価されるようになり、豊田コーチも新外国人ギャレットにフォークを伝授し投球を幅を広げさせた。有能なコーチも育っている。
一方、西武打線は今季、辻監督就任以来3年連続でリーグトップの座を守ってきたチーム打率が.238(リーグ5位)、総得点が479得点(同4位)に転落。このタイミングでコーチ陣のテコ入れを行ってもおかしくなかったが、渡辺GMは「一昨年と昨年は、打撃コーチ陣のお陰で連覇できた部分がある。1年悪かったからといって、どうこう言うべきではないと思う」と擁護。その上で「彼らも、自分が置かれた立場はわかっている。来季また強い打線を作るべく努力してくれると思う」と付け加えた。
次期1軍監督の有力候補ともいわれる松井稼頭央2軍監督は、就任後2年が経過しスタンバイ。仮に1軍が来季も優勝を逃すようなことになれば、“辻政権”の存続は保証の限りでなくなる。渡辺GMの言葉からも、「来季は待ったなし」の緊迫感が伝わってくる。
投手陣は、チーム防御率が今年で3年連続リーグワースト。6年目の高橋光が初めて規定投球回数を突破し、8勝8敗、防御率3.74と成長のあとを見せたが、それでも先発陣は手薄だ。現楽天の涌井、岸、現マリナーズの菊池らエース級がFAやメジャー移籍で続々と抜けた穴を埋めきれないでいる。
こちらは2軍からの底上げが急務。そういう意味で、新任の大石2軍コーチにかかる期待も大きい。渡辺GMは「ファームには20~25歳のイキのいい投手がたくさんいる。来年は1軍でチャンスをつかんでほしいし、ファームでしっかり指導してほしい」と語った。
辻監督就任以来、チームはレギュラーシーズンで2位、優勝、優勝、3位と抜群の戦績を残している一方で、日本シリーズには1度も進出していない。“辻ファミリー”は崖っぷちの来季、どんな形で底力を見せるだろうか。
(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)