ダルビッシュは「別次元」 カブス投手コーチが驚愕した右腕の“魔術師”ぶり
ホトビー投手コーチ「ダルビッシュのように球を操る投手を見たことはありません」
カブスのダルビッシュ有投手は今季8勝を挙げて日本人初の最多勝を獲得。サイ・ヤング賞投票ではツインズ・前田健太投手と共に日本人最高位の2位に入った。米放送局「NBCスポーツ・シカゴ」はトミー・ホトビー投手コーチがサイ・ヤング賞の候補になった要因を語る音声を公開した。ダルビッシュの活躍を間近で見てきた投手コーチにはどのように映ったのか。
11種類とも言われるほどの球種を操るダルビッシュ。19年からカブス投手コーチとして見てきた男は、まず日頃の会話やゲームプランが「別次元」と証言した。
「彼(ダルビッシュ)はスカウティングレポートを見て、どの球種がその打者たちに効果的なのか常に理解しています。そして、その球種が上手くいっていない時もよく分かっています。球種が多いため、その球を投げる必要がありません。右打者にスライダーを多く投げるゲームプランだとして、それが上手くいっていない時にはカットボール、カーブなど他の選択肢があります。彼はこの3人に投げたいのは83~87マイルの“縦”に落ちるカットボール、この3人に使いたいのは89~93マイルの“横”のカットボールと言ったりします。これは別次元のことです」
「ゲームプランを考えるのが楽しいです。この打者はスライダーを苦手としていると言うだけではありません。球種、スピンレート、動きの種類についてまで分析できます。多くの場合、その球種を持った投手をマッチアップさせようとしますが、ダルビッシュは何でも自在に操れます。間違いなく別次元のことです」
変幻自在の投球術。ホトビー投手コーチが具体例として挙げたのは「今季終盤のホワイトソックス戦」だった。
「相手打線にはスライダーやカットボールを打てる右打者が多くいました。ダルビッシュには『フォーシームを使う必要があるが、ベストピッチを使う方法も見つけなければならない』と話していました。様々な選択肢について話し合いました。そして、彼はウォームアップ中にカットボールを投げ、本当に良い横の動きで、すごく速かったです。ブルペンで93~94マイルでした。ビクター・カラティニが『それは何? どの球種?』と聞き、ダルビッシュは『2017年のカットボール。以前によく投げていたんだ。このチームには今投げているカットボールよりも良い動きだと思う』と答えていました。2017年を最後に投げていなかった球を駆使し、その試合で圧倒的でした」
「彼がしたいように、自由にできる環境を作れていることがいいと思います。今季の本拠地でのカージナルス戦だったと思いますが、スライダーが素晴らしかったです。ウォームアップでは良くなかったのです。何を変えたのか聞いたら、『スパイクスライダーを投げている』と言っていました。彼のように球を操る投手は見たことがありません」
多くの球種を操り、その勝負球が不調と見るや、さまざまな引き出しから打開策を探る。間近で見てきた投手コーチにとって、ダルビッシュの“日常”は驚異的に映っていたようだ。
(Full-Count編集部)