若き日の坂本勇人は「篠塚、由伸のよう」 当時の2軍首脳が感じ取った天賦の才

岡崎氏は2軍打撃コーチ、2軍監督を経て、2011年にヘッドコーチに就任【写真提供:読売巨人軍】
岡崎氏は2軍打撃コーチ、2軍監督を経て、2011年にヘッドコーチに就任【写真提供:読売巨人軍】

1年目の9月に1軍昇格し、中日戦でプロ初ヒットをマークも2軍で感じていた印象

 坂本が2軍にいた期間は短い。土台づくりをしていたところで1軍からお呼びがかかった。9月6日。ナゴヤドームの中日戦の延長12回に代打で出場し、ヒットを放つと、それがV打に。2年目からは1軍レギュラーの階段を昇り始めた。

「2軍での成績は圧倒的だったかと言われれば、そうではなかったですから。すぐに結果を残したところは力以上の何かを持っているということです。いろんな選手を見てきた中で感じていたことは、言ったことをすぐできる人はすぐ忘れる。なかなかできなかった人は、忘れない。このどちらかなんですが、勇人はすぐできて、忘れないという印象がありますね」

 岡崎氏は2軍打撃コーチ、2軍監督を経て、2011年に原監督のもと、ヘッドコーチに就任。主力打者となった坂本を再び、近くで見ることになった。2012年は日本一になり、そこからリーグ3連覇の立役者となった坂本は2015年シーズンから主将になった。

「2011年……あの年は統一球で、バッターの誰もが苦しんでいました。でも、あの時くらいから、何かを感じて打撃練習に取り組んでいた。やんちゃな部分とものすごい大人なところの両方がありましたね。野球への考え方は年々、しっかりしていった気がします。キャプテンになって、それまでは由伸や阿部の末っ子みたいな立ち位置だったけど、彼の中で段階を昇って、野球の技術も上がったと思います」

 体の細かった19歳は13年の月日を経て、強く、たくましく巨人を代表する選手へとなった。

「想像以上に速いペースで安打を積み重ね、すごいと思います。普通にやれば3000安打を超えるペース。これからどんな選手になっていくのか興味がありますね。入団時から知っているので、野球選手だけでなく、人間として大きくなっていく姿を見るのは、本当にいいものです」

 岡崎氏はスカウト部長などを歴任し、現在、子供たちに野球の楽しさを伝えるジャイアンツ・アカデミーの校長を務めている。アカデミーでの指導のほか、球団の野球振興部が管轄する野球大会等の運営に携わっている。いつか芽吹いて、大きな花を咲かす――。あの時、活躍を信じた若者が成功するストーリーを見る瞬間は、いくつあったっていい。温かい眼差しで、未来のスター候補たちを今も見つめている。

(楢崎豊 / Yutaka Narasaki)

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