打率1割台でも信念貫き「良かった」 レイズ筒香が激白、1年目の苦闘と収穫
逆方向へのアーチで一定評価も「完璧なホームランは1本もなかったです」
手探りのシーズンの中でも一定の評価を得ていたのが、ここぞでの一発、ホームランだった。特に、逆方向のスタンドに叩き込むアーチは地元メディアでも高評価。ただ、筒香自身は「自分の中では完璧なホームランは1本もなかったですし、ホームランを8本打ったっていう感覚もないんです」と明かす。
「会心の当たりは1本もなかったですね、今年に関しては。日本で使っていたバットがメジャーでは使えなかったので、そこはずっと悩んでいた点の1つ。どこか違和感がある状態だったので、余計に気持ちいいホームランがなかったんだと思います。ただ、おかげで今年はいい意味での鈍感力がついてきたのかなとも思いますね」
日本で10年以上使ってきたグリップが細く、ヘッドが重めのバットは、メジャーの規定を通らず。新たなバットで勝負した。それ以上、愚痴めいたことは言わなかったが、バットを体の一部だと思って操ってきた男にとっては、わずかな感覚のズレがとてつもなく大きなものに感じられたはずだ。だが、そこに言い訳は求めない。
振り返ってみれば、筒香はこれまでも新たなステージに進んだ時、スムーズに結果を出すタイプではなく、壁にぶち当たり乗り越えてきたタイプだ。慣れるまで少し時間はかかるが、そこから爆発的な成長を見せる。横浜高校から進んだDeNAでは1軍で成績を出すまで5年掛かったが、それ以降の活躍はご存じの通り。「最近気付いたんですけど、できないことをそのままにしない、できない時に逃げない、これと決めたことは継続するっていうのは、人よりもこだわりを持っている部分かもしれません。僕には、逃げる、という選択肢はないし、それが普通だと思っていたんですけど」と自己分析する。
それだけに、目先の結果を追い求めることに逃げず、立ちはだかる壁に正面衝突をしながら攻略のヒントと手応えを得た今年は「僕の人生において、すごく大きな1年になると思います」と言えるのだろう。
「来シーズンにむけてのこのオフが、ここ数年では断トツに楽しいシーズンオフになると感じています。はやく野球をしたいっていう想いが、例年に比べたら圧倒的に強いですね」
契約最終年、勝負の2年目に向けて、成長の青写真はしっかり描けているようだ。
(後編に続く)
(佐藤直子 / Naoko Sato)