生卵事件やON対決での悔し涙… V4達成の王会長が“戦友”に送った1通のメール
ON決戦で敗れ、バーを貸し切ったミーティング会場で流した王監督の悔し涙
なかなか勝てない時期が続くが“王イズム”はしっかりと受け継がれる。小久保裕紀、城島健司、松中信彦、井口資仁らが着実に成長すると1999年にリーグ優勝、そして日本シリーズでは中日を破り悲願の日本一を達成。翌2000年にはリーグ連覇、そして日本シリーズでは中内オーナーらが待ち望んだ巨人との「ON決戦」が実現した。
残念ながら根本氏は1999年にこの世を去り、念願だった「ON決戦」を見ることはできなかった。二人三脚でホークスの下地を作った瀬戸山氏も「20世紀までに……と仰っていたが何とか間に合った。その瞬間に根本さんが立ち会えなかったことが唯一の心残り」と振り返る。
同シリーズでは敵地で連勝スタートも4連敗で終戦。日本一を逃した第6戦終了後、都内の宿舎ではユニホーム姿の王監督が報道陣に対応した。その後はごくわずかな人数だけでミーティングを行ったが、そこには涙する指揮官の姿があった。
「バーを貸し切ってミーティングをするつもりだった。もちろん、優勝を想定していたが負けてしまった。選手、コーチ連中もいなくて部屋に返して、5人ぐらいで話をした。王さんは放心状態で、少しすると子どものように悔し涙を流されていた。それだけ悔しかったのでしょう」
昨年、そして今年と圧倒的な強さを見せ巨人を下し日本シリーズ4連覇を果たした。2019年は「ON決戦」以来、19年ぶりの巨人との日本シリーズで“借り”を返したかのように見えたが、瀬戸山氏は当時、王会長から届いたメールを振り返る。
「巨人に勝っての日本シリーズは気持ちが晴れました。だが、今年は(リーグ)2位からの日本一。来年は1位になって日本一になります 王貞治」
パ・リーグを制し、日本シリーズで巨人に勝つまで納得はできない。瀬戸山氏は2000年に味わった悔しさはまだ晴れていない印象を受けたという。そして今年は3年ぶりのリーグ優勝を果たし日本一となったが、その後に来たメールにまたも驚かされた。
「ありがとうございます。よい戦いができました。もっと強くなりたいです。選手の成長が楽しみです。まだ頑張ります。 王貞治」
圧倒的な強さを見せ日本シリーズ4連覇を果たしてもまだ、満足していない姿に「凄いですよね、王さんはまだ頑張ると仰った。もっと強くなると……。多分、巨人のV9を超えるV10まで頑張るということでしょう」。瀬戸山氏も王会長が見据えるホークスの未来像には驚かされるばかりだった。
歩みを止めることないホークスはヘッドコーチに小久保氏を招聘。瀬戸山氏と小久保氏には切っても切れない縁がある。球界に激震が走った巨人への無償トレードにはナイン、ファンが涙したのだった。
(橋本健吾 / Kengo Hashimoto)