ロッテの快進撃を可能にした“5イニング” 数字で見る先発投手の貢献度は?

ロッテ・美馬学、石川歩、小島和哉(左から)【写真:(C)PLM】
ロッテ・美馬学、石川歩、小島和哉(左から)【写真:(C)PLM】

リリーフ陣だけでなく、先発陣の奮闘も躍進を支えた要素の一つ

 野球を分析する際に用いられる指標の一つに、「ピタゴラス勝率」というものがある。この指標は、統計学的な法則から勝率を予測するもので、「(チーム総得点の2乗)÷(チーム総得点の2乗+チーム総失点の2乗)」と比較的簡易な計算式で示される。

 今期のロッテはチーム総得点が461、総失点が479と、得失点差がマイナスだった。それゆえにピタゴラス勝率でも.481と負け越していたが、実際のシーズンでは3つの勝ち越しを作って勝率.513という数字を記録。指標に囚われない快進撃を見せた理由は、一体どこにあったのだろうか。

 前編では、抜群の安定感を誇ったリリーフ投手たちの存在と、個々の投手の負担を減らす運用面での工夫について取り上げてきた。今回の後編では、そのリリーフにつなぐ前の局面を担う、先発投手にフォーカスして考察していきたい。

 ここまでは救援陣の好投とその運用法について触れてきたが、それでは、その救援陣につなぐ前の先発投手はどのような状況だったのだろうか。ここからは、マリーンズの先発陣を取り巻く事情について見ていきたい。

 まず、今季のロッテでは先発投手の防御率が4.07、それに対してリリーフ投手の防御率は3.30という数字が残っている。この成績を見ても、やはり、先発陣よりも救援陣のほうがより安定していたという傾向が見て取れる。

 しかし、だからといって先発陣の貢献度が低かったというわけでは決してない。その根拠となるのが、シーズンを通して先発が早期降板したケースが少なかったという点だ。それを裏付ける数字として、まずは今季のパ・リーグ各球団が6名以上の投手を起用した試合数を以下に紹介したい。

パ・リーグ各球団が6名以上の投手を起用した試合【表:(C)PLM】
パ・リーグ各球団が6名以上の投手を起用した試合【表:(C)PLM】

平均投球回、平均投球数の2つから、先発投手に求められたタスクが読み取れる

 6名の投手を起用した試合数が1桁にとどまっているのはロッテのみで、7名以上を合わせても10試合と特筆すべき少なさとなっていた。先発投手が5回まで投げてくれれば、残りの4イニングで4名の投手を使っても、その試合で起用された投手は5名という計算になる。6名以上の投手をつぎ込む試合がこれだけ少なかったことからも、先発投手が5回以上を消化してくれる可能性が高かったとうかがい知れる。

 続いて、今季のマリーンズで4試合以上に先発登板した投手たちの顔ぶれと、その成績は以下の表の通りだ。

ロッテで4試合以上に先発登板した投手の成績【表:(C)PLM】
ロッテで4試合以上に先発登板した投手の成績【表:(C)PLM】

 2桁勝利を挙げた投手こそ美馬投手ただ一人だったが、先発登板数上位5名の投手は、いずれも平均90球以上を投げ抜くタフネスぶりを発揮していた。平均投球回の面でも上記の表で取り上げた8名の投手のうち7名が5イニング以上となっており、先発投手が最低限以上のイニングを投げ、1試合ごとに登板するリリーフ投手の数を極力少なくしていたことがわかる。

 ここからは、今回取り上げた先発投手たちの今シーズンの投球について、個別に触れていきたい。

 開幕投手を託された石川投手は、今季登板した21試合のうち、最後の2試合を除く全ての試合で6回以上を投げ切るという驚異的な安定感を披露。7月31日からは6連勝と快投を見せたが、10月以降は6試合で未勝利と終盤戦はやや調子を崩した。とはいえ、石川投手が今季消化した133回1/3という投球回は、名だたるパ・リーグの投手たちの中でも最多の数字だった。救援陣の負担を減らすという面において、その貢献度は十二分に高かったといえる。

 チーム最多の10勝を挙げた美馬投手も19試合中18試合で5回以上を投げ抜いており、ベテランらしい粘りを随所で発揮。首位争いを演じたソフトバンクから5勝を挙げた相性の良さも特筆もので、移籍1年目からチームの快進撃に大きく貢献する活躍を見せた。これで直近5年間で4度目の規定投球回到達と、安定したイニング消化能力は新天地でも変わらず。その特性は、今季のチーム方針とも大いにマッチしたものだった。

 二木投手は6月30日の試合で1回1/3で6失点KOされて再調整を余儀なくされたが、8月8日の昇格以降は抜群の安定感を発揮。8月以降の13試合中12試合で6回以上を投げ抜き、8月22日から4試合連続で無四球という驚異的な制球力を見せつけた。石川投手、美馬投手にも共通する点だが、その与四球の少なさは球数の減少、ひいては投球回の増加にもつながる。背番号「18」を受け継いだ今季は、未来のエース候補としての確かな成長を示す1年だった。

若手の多い先発陣ながら、責任投球回を投げ抜く傾向は共通していた

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