鷹・甲斐拓也が語る“捕手”とリードの裏側 投手の繊細さを示す日本Sでのワンシーン

日本シリーズ第3戦で甲斐とムーアのバッテリー武器のカットボールを1球も使わなかった

 そうして迎えた4回だ。投球練習でムーアが1球だけカットボールを投じた。ブルペンと同様にキレは良くなく、ほとんど変化はしなかった。これだけなら良かった。この1球を投げた後にムーアのボールに突然狂いが生じた。ストレートがシュート回転するようになり、コントロールにもバラツキが生じるようになった。1死から坂本勇人には3球連続でボール。結局、フェンスギリギリの左飛に打ち取ったものの、不安定さを感じさせた。

「カットボールを1球投げた後の真っ直ぐがだいぶシュートするようになって『あれ?』と思ったんです。その時に絶対今日はカットボールは投げないほうがいいと思いましたね。その後の坂本さんの打席でもそういうボールが来ていて、これはまずいと正直思いました」

 ちょっとしたことでもバランスを崩しかねない投手の繊細さ。その見ているものには分からない、そして、どこで起きるか分からない変化を、その瞬間瞬間で感じ取りながら、捕手は瞬時に物事を判断する。まさに、この日本シリーズのワンシーンは、捕手の洞察力と分析力、判断力を象徴する出来事だった。

「スピードガンの球速だけじゃ分からないことも捕手は感じていますし、色々なことを感じながら、変化をつけてやっています。それでも、どれだけやってもうまくいかないことだってあります。全部が全部抑えられるわけじゃないですし、打たれることだってどうしてもある。相手だって研究してきますし、対策をしてきますから」

苦しんだ1年で学んだ人として大事なこと「自分もそういう風になりたいと思った」

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