ロッテ首脳陣が佐々木朗希を“守る”ワケ 井口監督の信念と吉井コーチの親心
ファームでの雑務も経験「いろいろな意味で成長している」
ファームでトレーニングを積ませずに1軍に同行させたのは、吉井投手コーチの意向が強かったが、指揮官もまた「ローテーションピッチャーがどういう調整をしているのか、自分の目で見てほしいのもあった」と明かす。佐々木が入団間もない頃、井口監督は「規格外の投手になる可能性がある」と評したが、その想いは1年経った今も変わらない。
「変わりませんね。規格外だからこそ、怪我のリスクも大きくなると思う。吉井さんはそこを本当に慎重にやってくれています。1軍に帯同させながら、体に負担のないフォーム固めにかなり時間を割いていたみたいですね。ファンの方々が楽しみにしてくれているのは感じていますが、我々が焦らせてしまってはいけない。それは朗希に限らず、若い選手はみんなそうだと思います」
シーズン終盤になると、佐々木はファームに合流し、若手選手が任されるスコア記入やチャート記入、ボール拾いなどの雑務を経験した。スキルアップのために下地となる体作りが必要であるのと同じように、人としてもスケールの大きな選手になるためには下積み経験が必要だ。短い期間ではあるが、ファームでの日々を経験した佐々木は「ここは長くいるべき場所じゃない」という趣旨の感想を口にしたという。
「ずっと1軍にいさせていいのかなと思うこともあったんですけど、ファームに行った時の発言を聞いたら、いろいろな意味で成長しているんだなって思いましたね。その意識を持ってくれただけでも、今季に繋がる。あとはオフの間にどれだけ体作りとフォーム固めを進められるか。ただ、今年いきなり1軍での活躍を期待するんじゃない。その先の未来を見据えて、チームを背負って立つ投手になってもらいたいと思っていますから」
2021年、ロッテファンはもちろん、広く野球ファンが佐々木の1軍デビューを待ち望んでいる。
「そうですね。でも、焦らせてはいけない。彼がしっかり投げられるという自信がついた時に投げればいいと思います。今年は高卒投手として中森俊介も入ってくるので、お互いにいい刺激になるはず。若くて華のある選手が育っていくのは、本当にいいことだと思います」
チームの未来を背負って立つ才能を持つからこそ、守りながら育てる。井口監督のアプローチが揺らぐことはない。
(佐藤直子 / Naoko Sato)