ロッテの打倒ホークスは可能か? “元鷹の名伯楽”がコーチ就任で掲げる意識改革

中日コーチ退任後に「メンタル心理カウンセラー」の資格を取得

「指導者自身に選手を上回る向上心がなければ、教え導くことはできない」と考える森脇氏は、2018年限りで中日1軍野手チーフコーチを退任した後、現場を離れていた2年間で「メンタル心理カウンセラー」の資格を取得した。プロ球界ではここ数年、ソフトバンクの中村晃や元ソフトバンクの川崎宗則氏、西武をいったん戦力外となって育成契約を結んだ多和田ら精神的な病気で苦しむケースもある。森脇氏は30歳の頃から独学で心理学を勉強。現役引退後は毎年オフシーズンに渡米し、メジャーやマイナーのコーチ、メンタルトレーナー、時には心理学者とミーティングを行って見聞を広めてきた。旧態依然とした頭ごなしの指導でなく、選手と向き合い、心に寄り添うスタイルを身上としている。

 また、森脇氏の実直な人柄を示すのが、高校1年から還暦を迎えた現在まで1日も欠かしたことがないという「野球日記」の存在だ。「高校に入学した最初のホームルームで、担任の先生に勧められたのがきっかけでした」と振り返る。

「長い野球人生で、日記が支えてくれたことは何度もあります。現役時代、疲労がたまる8月や9月に、後ろ向きの自分がいた時には、1月や2月の日記を読み返して新鮮な気持ちを思い出しました。大けがをして入院していた時のことを読み返し、野球ができる喜びをかみしめたこともあります」

 指導者となってからも「各選手とどう向き合い、自分が何を伝え、選手がどう反応し、どんな変化をしたかがすぐに確認できる。対戦相手も含め、選手のわずかな変化に気付き、見落とすことなく書き留めておける。頭で覚えているつもりでも、忘れるのが人間ですから」と日記の効用を説く。「日記は僕にとって、人生の伴走者であり証言者です」と言う。豊富なキャリアはもちろんだが、こうして何事にも真摯に取り組む姿勢が、各球団から指導者のオファーが絶えない理由の1つなのだろう。

 NPBで5球団目となる新天地へ。「監督が決断を下しやすいように、選手の能力を高め、駒としてそろえることがコーチの仕事。自分の担当分野に全力を注ぎたい」と森脇氏。かつての教え子とともに、常勝球団に挑む。

(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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