容姿だけで「カッコいい」と言えない “草分け”元広島・高橋慶彦氏が憧れた選手とは

ユニホームの着こなしやイケメンに「かっこよさは感じない」

 1軍で活躍するようになってからは、「かっこよさ」を感じる対象の傾向が少しずつ変わっていった。カープで同じ釜の飯を食った先輩の衣笠祥雄氏、山本浩二氏、江夏豊氏…コワモテと呼ばれる人たちで、女性ファンから歓声を浴びるタイプではなかった。「まず、プロとして技術が高いことが第一条件。その上で、男の色気というか、粋でいなせな雰囲気があった」と語る。阪神の主砲を張った掛布雅之氏、身長168センチの小柄ながら首位打者2回、通算2173安打を誇った元ヤクルト・若松勉氏の「かっこよさ」にも心を打たれたと言う。

「最近はイケメンだとか、スタイルがいいとか、ユニホームの着こなしがいいとかで人気を集める選手もいるみたいだけど、俺はそこに『かっこよさ』は感じない。ここぞという場面で絶対打つとか、チームを牽引する力強さや頼りがいがないとね。逆に『そんなにスタイルが良くて野球が下手なら、他の道に行った方がいいんじゃないか?』と言いたくなるような選手も時々いる」と苦言を呈する。

 最近、最もかっこいいと感じた野球選手は、2019年3月限りで現役引退したイチロー氏である。

「彼は大記録を達成した時でさえ、派手なガッツポーズなどはしなかった。決して冷めているわけではないが、控えめで節度を保っていた。アメリカでいえばポーカーフェースだろうけれど、いかにも日本人的な美学がうかがえた。強い精神力があるからこそできることでもある」と称賛。「“侍魂”という言葉には、ああいう立ち居振る舞いも含まれるのではないか。侍ジャパンに選ばれる選手にはぜひ見習ってほしい」と付け加えた。

 高橋氏は今の球界にもそんな「かっこいい」スターの台頭を待望してやまない。

(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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