「指が13センチ開く」 鉄アレイやビール瓶で…元横浜大洋エースのフォーク誕生秘話

“フォークの神様”杉下氏から指導も…指の長さは段違い

 一方で、「辻さん、村山さんの話は非常に勉強になりましたが、村山さんと僕とでは体格も、投げ方も違う。村山さんはストレートがすごく速かったとも聞いています。結局、僕のフォークは僕独自のものだったと思います」と強調する。

 実際、ひとくちにフォークといっても、投げる人間の特徴によって様々だ。遠藤氏は、「フォークボールの神様」こと元中日の杉下茂氏からも指導を受けたことがあるが、手を合わせてみると、指の長さが段違いで、遠藤氏の指先は杉下氏の第一関節あたりまでしか届かなかった。同じ感覚で投げることには無理があった。

 遠藤氏は自身のフォークに年々改良を加え、最終的には「真っすぐ落ちる」「シュート気味に落ちる」「スライダー気味に落ちる」の3種類を投げ分けることができた。

「普通に投げれば、だいたいシュート回転するので、左打者には有効でしたが、右打者に対しては内角へ入っていく軌道になり、当てられることが多かった。そこでまず、どうやったらスライダー回転になるかを研究しました」と説明する。投げ方はどれもストレートと同じ感覚。簡単な言い方をするなら、指を縫い目に掛けずに投げれば真っすぐ落ち、中指を縫い目に掛ければスライダー回転、人さし指に掛ければシュート回転しながら落ちた。

 辻氏や村山氏に刺激を受けながら、あくまで我流で無双のフォークを開発し、プロ人生を切り開いた遠藤氏。順調にエースとしての階段を駆け上がったようにも思えるが、その原点にはまさかのサイドスロー転向を余儀なくされたプロ1年目があった。

【写真】「指の間が13センチ開く」遠藤一彦氏がフォークの握りでボールを持つ実際の写真

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