「キャッチボールもしたくなかった」 ロッテ美馬が語る移籍1年目、2桁勝利の舞台裏

昨季のCS第1戦で先発も6回1死二、三塁の場面で降板【写真:荒川祐史】
昨季のCS第1戦で先発も6回1死二、三塁の場面で降板【写真:荒川祐史】

日本一を知る男の嗅覚が告げるタイミング「今年が勝負な感じ、しますよね」

 美馬が熱くなるのには理由がある。「負けると悔しいですからね、結局。なかなか簡単に片付けられないと思っちゃうんです」と言うと、こう続けた。

「143試合の中の1試合って考える人もいるかもしれないけど、僕は1試合1試合が勝負だと思っている。だから、勝ちたいんですよね。その気持ちがすごくあるんで。それでも冷静にやった方がいいんだって、去年勉強になりました。ただ最後、CSのソフトバンク戦は抑えられずに爆発しちゃいましたね(苦笑)。引き分けでも負けに等しい状況で、あそこで追いつかれたら相手を勢いづかせるだけだと思っていたので」

 ソフトバンクと戦ったCS第1戦に先発した美馬は、6回まで3-1と2点のリードを守っていたが、2連打と送りバントで1死二、三塁とし、同点の走者を残したまま降板。中継ぎが救援に失敗して同点に追いつかれると、ベンチで大いに悔しがった。怒りの矛先は、もちろん走者を残した自分に向いていた。

 2020年は悔しい締めくくりとなったが、チームとして今季に繋がる手応えも感じたという。

「飛び抜けて戦力が揃っていたわけでもないし、途中コロナで離脱する選手も出た中で、なんだかんだ耐えた。若手も育ってきているし、それを考えたら可能性があるチーム。僕もフルシーズンを戦い抜いて、ダメな時でも耐えられる投球で、しっかり勝っていきたいです。今年が勝負な感じ、しますよね」

 2013年には楽天で日本一を経験した男が持つ嗅覚は、今年が勝負だと感じ取っている。2010年以来11年ぶりの日本一に実現に向け、熱さと冷静さのバランスを保ちながら、マウンドで腕を振り続ける。

(佐藤直子 / Naoko Sato)

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