「キャッチボールもしたくなかった」 ロッテ美馬が語る移籍1年目、2桁勝利の舞台裏

ロッテ・美馬学【写真:荒川祐史】
ロッテ・美馬学【写真:荒川祐史】

2017年に続き、自身2度目の2桁勝利も「キャンプ中はマジでやばかったです」

 コロナ禍により未曾有のシーズンとなった2020年。試行錯誤の120試合を戦い抜いた末、2位となったロッテは7年ぶりのクライマックスシリーズ(CS)進出を果たした。CSではソフトバンクの牙城を崩せなかったが、若い選手たちが独特の緊張感を味わい、優勝への想いを強くした意味は大きい。

 昨季チーム最多にして唯一の2桁勝利となる10勝を挙げ、先発陣を牽引したのが、美馬学だ。2019年オフに楽天からFA移籍してきた34歳右腕は、2017年以来、自身2度目となる2桁勝利について「メチャメチャ打ってもらったおかげ」と打線に感謝する。

「完全に援護してもらえたおかげ。楽に投げさせてもらって、なんとかリードを守れたので、勝たせてもらったっていうだけですね。相当ランナーを出していたからリズムは悪かったんですけど、『僕だけこんなに?』って不思議なくらい打ってもらいました」

 とは言うものの、ソフトバンク戦は7試合で投げて5勝1敗、防御率2.70という相性の良さを発揮。「なんだかんだで勝てていたのが自信になったのはあると思います」と振り返る。

 新天地での1年目。「若手投手を引っ張る存在になってほしい」という井口資仁監督の期待にも応え、プロ10年目で初めて肘に違和感を感じることなくオフを迎えるなど、全ては順調に進んだかに見えた。が、実は「野球について、人生で一番くらい悩んだ」シーズンだったと明かす。

「キャンプ中はマジでやばかったです。キャッチボールもしたくない。そのくらいバグりました」

 バグった原因は「考え過ぎ」にあった。アマチュア時代から怪我がちなキャリアを送っている美馬は、体に余計な負担が掛からないように「フォームはどんどんシンプルにするようにしています」という。よりよいフォームを求める中で昨オフ、自身の理想に近い形にたどり着いた。

 満を持して臨んだ石垣キャンプ。だが、新しいチームで迎える初めてのキャンプで気負いがあったのかもしれない。「これだ」と思うフォームにこだわり、繰り返し投げ続けるうちに、人知れず迷路に入り込んでしまった。

「キャンプイン当初はいい感じで投げられていたんですけど、そのフォームを追い求め過ぎましたね。新しい球団に来て『よく見せなきゃ。ちゃんとしなきゃ』みたいなものもあったと思います。いつもならシーズン中でも少しずつ投げ方を変えながら合うものを見つけていたのが、去年は考え過ぎて『このフォームで投げないとダメ』という感じになってしまった。

 みんなあまり気が付いていなかったかもしれないけど、ブルペンとか相当ヤバかったです。ブルペンキャッチャーの方々は気付いていたと思いますよ。キャッチャーが捕れないところに投げたのなんて初めて。人に見せられないくらいでしたから」

試合中に熱くなる美馬を絶妙に抑える、捕手・田村の冷静な声掛け

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